悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

青森ドロップキッカーズ 森沢明夫

森沢明夫さんの小説です。
津軽百年食堂、ライアの祈りと同じシリーズに位置付けされるのかと思っていたら、ストーリーは全く違います。
大森桃子さんという登場人物がでてきますが、特に主人公でもなくこの物語では脇役ですね。
なので、この本から読み始めても全く違和感ないです。



この本の目次

コイントス 苗場多恵

第1エンド 岡島新平

第2エンド 苗場宏海

第3エンド 沢井柚香

第4エンド 苗場宏海

第5エンド 沢井柚香

第6エンド 苗場宏海

第7エンド 沢井柚香

第8エンド 苗場宏海

第9エンド 沢井柚香

第10エンド 苗場宏海

エキストラエンド 沢井柚香

あとがき

登場人物

苗場宏海
この物語の主人公。
体が小さく気が弱いので、いじめの対象となっています。
おばあちゃんっ子であり、いつもニコニコして、ありがとうを口に出せる優しい男の子です。
カーリングに目覚め、カーリングを通して成長していきます。

沢井柚香
カーリング選手です。
カーリングは大好きなのですが、選手としてステップアップするために、更にレベルの高い選手たちとチームを組むべきかどうか迷っています。
姉妹で上を目指すためには現在のチームメイトと別れてしまうことになります。

大森桃子
津軽で100年にも及ぶ食堂の娘。
バツイチで東京から地元青森に出戻ってきた三十路の女性。
でも、いつも明るい魅力のある女性です。
カーリングおよびカーリング競技場を作るアイステクニシャンの技術を師匠の岡島新平から教えてもらっています。

岡島新平
カーリングを愛する元アスリート、現アイステクニシャン。
弟子には、元々飲み友達でもある大森桃子がいます。

工藤雄大
苗場宏海とは小学校時代は親友でしたが、中学になりワルのグループと連るんでいます。
父は早くに亡くなり、居酒屋ふくすけは母の美佐子が切り盛りするお店です。

沢井陽香
沢井柚香の妹でとてもチャーミングなモテ女子。
そして姉同様カーリングの有望な選手です。

長野亜美
苗場宏海の片思いのクラスメイト。

あらすじ

中学ではいじめられている少年苗場宏海。
女性みたいな名前で体も小さいので、不良たちにとっては格好のいじめの対象なのでしょう。
いじめられている彼ですが、それに対して抵抗もなく、ニコニコと笑っています。
クラスにはちょっと好意を寄せている長野亜美がいます。
苗場宏海はいじめられてもニコニコしながらも、クラスではいじめられているため孤立しています。
そんな彼は空想の世界の中で自分の理想の世界を生きることでなんとか学生生活のバランスを保っているのでした。

長野亜美がカーリングに興味があることを小耳に挟んだ苗場宏海は、ひょっとしたら~と言う気持ちもあって、無料のカーリング体験スクールに参加します。
講師にはは岡島新平、サポート役には沢井柚香がいました。
苗場宏海は沢井柚香に美しいフォームと褒められ、有頂天に。
そしてカーリングこそが自分が心から楽しめる競技へとなっていくのでした。

岡島新平は初老の元アスリート。
そして今はカーリングの競技場、つまり氷を作るアイステクニシャンとしてその腕は評価されています。
ふくすけという居酒屋で出会った三十路バツイチ女性の大森桃子と意気投合し、飲み友達でしたが、カーリングにも興味を持っていたので、カーリングの指導とアイステクニシャンの指導模することになりました。
同じカーリング場で知り合った沢井柚香と沢井陽香という姉妹は将来有望なカーリング選手。
そして沢井姉妹には、有望だけにさらなるステップアップとして強化選手への誘いがあります。
ただチーム4人で行うカーリング競技ですから、今のチームを抜けることに対して、悩んでいました。
結局、強化選手となる道を選ぶのですが、元チームメイトからは祝福ではなく、罵声を浴びるのでした。
また強化選手としてチームメイトになったメンバーは沢井姉妹よりも圧倒的な実力を持っていて、次第にカーリングを楽しくプレイできないようになっていきます。


感想

カーリングと言う競技自体、オリンピックなどで有名になったもののあまり馴染みのないスポーツですね。
「おはじき」みたいなもの?というくらいの感覚しかありませんでしたが、多分ルールをしっかり把握したら楽しめるのでしょう。
そして見て楽しめるようになったら、やってみたくなるのかもしれません。
ただ、ストーンを目標に向かって投げるだけなら一人でもデキますが、チーム競技。
同じ意識を持った同じくらいのレベルの人とカーリングのチームを作るというのはなかなか想像できません。
ともあれ、カーリングの魅力に取り憑かれていく主人公がとても素敵に成長していく様を見ていくことがデキます。
主人公は体格にも恵まれず、大人しく優しい男子。
いつもニコニコしているためか、悪ガキ共のいじめの対象になってしまうのがつらいところです。
いじめられっぱなしであったこの苗場宏海はカーリングを通じて、自分が「リアル」で生きていく場所を見つけていくんですね。
それまでは自分の頭の中で描く「バーチャル」な世界でしか生きがいを見つけられなかった少年です。
彼は自分の力でいじめの問題を克服しました。
この物語のように強く生まれ変われる人がどれくらいいるのかわかりませんが、結局は自分に打ち勝つ強い気持ちというものがないとなかなか一歩踏み出せないものなんですね。
踏み出した後は本当に強いです。
彼の高校生活はとても輝いた青春時代になっていくでしょう。
後悔先立たず、自分の青春時代にどれくらい強く生きられたんだろう?って思ったりもします。
ただ、競技が全く違うのかノスタルジーに浸るというわけでもなかったですね。

 

森沢さんの小説ですから、どこにでもあるような話ですが、グッとくる、ジーンと来るシーンは盛りだくさんで、とても読みやすいです。

オススメですね

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