悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

白夜行 東野圭吾

女房にリクエストしてあったのでブックオフで調達してきてもらった。
かなり分厚い文庫本だが、面白かった。
以前堀北真希主演の映画を見たが、細かい点を覚えていない。まあ、それが良かった。読んでいて新鮮だった。
幻夜を読んだ後に読むというのはやっぱり順序は逆だが、それでも面白い。
幼い頃からの長い長い物語である。雪穂がクローズアップされるが、この物語は桐原亮司と唐沢雪穂二人の物語である。
数々の犯罪は長年執念深く彼らを追い続けた老刑事、笹垣の推理によって二人は共謀していたことになっている。
にも関わらず、この二人が直接話しをした、会ったという描写は全くない。そこがまた素晴らしいと思う。

舞台が布施で始まり、大阪市中央区日本橋も登場する。どちらもよく知るところ。
作者東野圭吾が生野出身であり、あのあたりのことはいくらでも描けるのだろう。大阪弁も本当に違和感なく、老刑事笹垣のセリフや質屋きりはらで働く松浦のいやみったらしい言葉も大阪ならではである。

主人公たちである桐原亮司と西本(唐沢)雪穂、10歳ほどの頃から30歳くらいまで20年にも及ぶ物語である。
この長い物語には多くの登場人物が出てくるが、それぞれが後に伏線となって出てくる。ただし、結局は主人公二人の物語を描く上での材料にすぎない。
多くの殺人事件が起こる。そして暗にそれらが彼ら二人の仕業であるように書かれているが、彼らは認めていないし、裁きも受けない。すでに最初の事件からは時効でもある。
亮司の父、雪穂の実母、実母の愛人、西口奈美江、そのヒモ、探偵の今枝、など長い間に多くの人が殺されてきた。
そして育ての親である唐沢礼子も殺されたのかもしれない。
幼いころの二人の荒んだ心が彼らの結びつきを強固にし、自分たちの行く先を遮るものは容赦なく排除する。ある意味彼ら二人は醜い大人たちの犠牲者であり、わずか10歳位にして魂が死んでしまった。
なんとも真相を知れば知るほど悲しい物語である。

白夜行 (集英社文庫)

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