悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

ミステリと言う勿れ 菅田将暉主演のミステリ映画

画像は公式サイトより

後で知ったことですが、漫画が原作だそうです。
CMでよくやっていたので、なんとなく面白そうだし、見てみようと思いました。
妻も見たいと言っていましたし、評価も良いので、U-NEXTで視聴しました。

後で知りましたが、すでにドラマで放送していたらしいですね。
TVではこの映画のCMをいやというほど見たので、印象に残っていますが、ドラマも人気があったんですね。
登場人物の名前を見て、こりゃ漫画だな~と思っていました。

まずは主人公、探偵役となるのが天然パーマの大学生、久能整(くのうととのい)。
久能という名前も珍しいけれど、その名字に整(ととのい)という名前を持っているなんて漫画やラノベにしかないだろうと思います。

そして今回は広島県の旧家の遺産相続事件に巻き込まれてしまいます。
その旧家が狩集(かりあつまり)家。
この名字も相当に珍しいし、知り合いに一人もいません。
この狩集家の遺産相続人が4人おり、そのうちの一人である汐路(しおじ)という女子高生が、強引にこの久能整を相続の立会に連れてくるのです。
狩集の4人は莫大な遺産の相続はしたいのですが、そのために相続人同士が血みどろの闘いをする!というのは横溝正史犬神家の一族です。
この映画にも「まるで犬神家の一族だ」というセリフがあったように、ネタであり、血なまぐさい事件は起こりません。
ただ、狩集家の相続は分割するのではなく、たった一人の相続人が全部を相続するというしきたりがあり、相続人は死亡したりとミステリな要素満載。
こんな理由のわからない事件を解きほぐすのが探偵役の久能整で、なんとも微妙な人物です。
金田一耕助もさえない探偵でしたが、現代版金田一耕助なんでしょう。
どこかコミカルですが、鋭い観察眼で状況をしっかりと把握、判断していきます。

さて問題の狩集家の4人です。
狩集理紀之助(かりあつまり りきのすけ)を演じているのは二枚目俳優の町田啓太さん。
波々壁新音(ははかべ ねお)役には、萩原利久さん。
赤嶺ゆら役には柴咲コウさんが演じています。
この映画のヒロインとも言える女子高生狩集汐路役には原菜乃華さんです。
残念ながら原菜乃華さんって誰か知らなかったですし、萩原利久さんも知らない俳優さんですね。
脇を固める俳優陣も実力派俳優を揃えていて、漫画原作ですが、見苦しい出来栄えではなくしっかりとした映画でしたね。
松下洸平さん、滝藤賢一さん、段田安則さん、松坂慶子さんなど豪華ですね。

犬神家の一族のパロディといえばそうかも知れませんが、全然違いますし、面白かったですね。

 


www.youtube.com

 

バカ格差 谷本真由美

画像はAmazonより

谷本真由美さんという人が書いた本ですね。
私はよく知りませんがTwitter(今はXっていうのですね)では有名な方のようです。
”めいろま”って名前らしいです。(知りませんけど)
ともあれ、Kindleにあったので、読んでみました。


表紙などに書かれている言葉通り「過激」なものを期待していたら拍子抜けするほど普通の内容でした。

6つの章がある本です。

第1章 日本のバカ格差ワースト5

第2章 仕事のバカ格差

第3章 生まれついてのバカ格差

第4章 男女のバカ格差

第5章 世界のバカ格差

第6章 日本からバカ格差をなくすには

バカ格差ワースト5には
タワーマンションの階数格差
②住む地域のバカ格差
③学歴のバカ格差
④お金のバカ格差
⑤情報のバカ格差
となっています。
どれもなるほどと思いつつも、なんだかしっくりしない気持ちにもなります。
タワーマンションに住む人たち、上層階に住むのが金持ちだと勘違いしている田舎者だと言っておられます。
本当にそうならバカでしょうが、タワーマンションに住む人たちが田舎者という風に蔑むのはどうなんでしょうね。
海外の金持ちは郊外にゆったりと邸宅を構えるとか言われても仕方のない話だと思うんですね。
ご自身は海外在住だそうですが。
住む地域のバカ格差では実質賃金を考えないバカと言っています。
たしかに東京などは物価が高いから地方に住むべきというのでしょうか。
東京と福岡を比べています。
たしかに福岡は魅力的な都市だと思いますが、そんな地域による実質賃金格差に基づいて暮らすところを変えるなんてことができるのでしょうかね。
そういう風にデキる人はすでにそうやっている気がするんですね。
学歴のバカ格差についても色んなところで書かれていることの焼き直しで目新しさはありませんでした。
お金のバカ格差についてはそのとおりでしょう。
資本主義が進み、貧富の差が激しくなっています。世界中の富がある一部の人間に集中しているというのはその通りで、民主主義というものの限界を感じています。
だからどうすればよいのかという提案が欲しかったですけれど、そういうものがなかったですね。
情報のバカ格差も「AI、IoT、情弱」という言葉に代表されるように語り尽くされたような内容でした。

第2章から第5章にかけても内容は目新しいことは特にありませんでした。
だからこそ期待した第6章です。
どうすれば格差社会(バカ格差)をなくすことができるのか?
格差を知り、異なる価値観を体験せよ、さすれば道が開かれんでしょうか。
は?
これぞという内容は皆無でした。
何よりも第1章で述べていた住む地域のバカ格差で実質賃金ウンタラカンタラとは矛盾する内容も述べています。
あれ?って思ってしまいました。
まあ、分かる部分もありますけどね。
そして挙句の果てには大どんでん返し
日本はまだマシだよ~外国はもっとひどいからね~って具合です。
あれ?この本って、日本のバカ格差をここまで述べてきたはずなのに、外国よりマシだよって、今更なんだろうな、と思いました。
そして日本はそんなに格差がないんだから細かい格差なんて気にすんなよな~自分の軸を持って自分らしく生きろって、ここまで散々煽ってきた内容とは違ってとっても乱暴な結末な本だなあって思いましたね。

肩書はIT戦略コンサルタント、エッセイスト、インフルエンサーで海外在住と普通の庶民から見れば羨ましがられる立場で、なんだか上の方から見下ろして「俺様が下々の人間に正しいこれからの生き方をおしえてやる」って感じが垣間見えてきます。

ずいぶんと辛辣な書評となりましたが、商業的に「煽る」文章やタイトルは必要でしょうが、内容が伴わないと批判しか出てこなくなるなあって気もします。
書いている内容自体は別に悪いことを書いているわけでもなく、読んでみること自体は悪くないのですが、どうも楽しくない印象を持ってしまいましたね。
今までこういうたぐいの本を読んでいないのなら、読んでみてもいいと思います。
でもそういう本をこれまでにいくつか読んでいて、この本の帯などに書かれている内容に期待して読んでみると、序盤はふーん、なるほどと思いながら読んでいけるのですが、最後の章で、がっかりしますね。
格差があることを肯定しているのか、否定しているのか、なんか中途半端で、読み終わった後、なんだか上から目線でバカにされたような気持ちになってしまいますね。

Winny 日本の落日の原点がここにもあった

画像はAmazonより

今日は帰宅時に大阪環状線が事故で止まっていまして、振替輸送で帰宅しました。
なんかめちゃ疲れました。
大阪メトロ(地下鉄で大阪市交通局ですね)の駅員がとても不親切でしたね。
確かに振替輸送に協力しているのが大阪メトロですが、それはお互い様でしょう。
わざわざ遠回りして帰ってきているのに、無愛想でした。
そして、この駅は振替輸送の対象ではないとのこと。
確かにJRの沿線とは少し外れていますが、振替輸送をご利用くださいというだけでそんな説明はJRにもなかったですし、われわれ右往左往している通勤客はわかりません。
もちろんご乗車ありがとうございますの言葉もありません。
振替輸送の乗客なんて客じゃないということでしょうかね。

 

とまあ、愚痴で始まってしまいましたが、今回は映画の感想です。
U-Nextで視聴しました。
ファイル交換ソフトとして一躍名を馳せた「Winny」ですが、この裁判ほど不毛なものはありません。
この映画も見ながら毒づいてしまうようなそんな内容です。
原作も読んだ記憶がありますが、かなり流し読みだったかもしれません。
でもこの裁判の内容を知って、本当にひどいと感じましたね。

私は専門家でもありませんがPCの業界に対して肌感覚として感じていることが多々あります。
パソコンのサポートカウンターや家電量販店でPCの販売やらやっていたこともあり、なじみが深いほうだと思います。

20世紀の末期、日本はバブルで賑わいましたが、バブルが弾けた後も日本の電子機器の技術力は素晴らしいものでした。
今でこそ、スマートフォン(携帯電話)はiPhoneをはじめ、海外製のものばかりですが、当時携帯電話は日本製以外には考えられない状態でした。
家電量販店のパソコンでも日本製が圧倒的でした。
デスクトップパソコンはまだしもノートパソコンは日本製以外は本当にゴツくて重くて性能も悪く、世界中でノートパソコンがまともに作れるのは日本しかないと思っていたくらいです。
iPhoneが登場したときも別に目新しい技術ではなく、日本にある部品を使えばこれくらいの商品は作れるとのたまったお偉い人がいたとか。
また日本がイケイケドンドンの時代に、アナログハイビジョンを世界に先駆けて「どんなもんだい~!」と偉そうにしていた役人がいたとか言われていますが、政治も経済もどこかお山の大将というか、島国根性というか、井の中の蛙というか、です。

iPhoneの本質がハードウェアにあるのではなく、使い方を含めたソフトウェアにあることに気づかない経営陣やデジタル時代を先読みできなかった放送技術で天狗になって世界中で村八分になったこと、など本当に日本のトップはイケてないなあと思います。

余計なことをまた申し上げましたが、この映画の方も見ていて胸糞悪くなることが多々あります。

さてファイル共有ソフトというものが大流行した時期がありました。
アメリカではMP3ファイルを共有するソフトウェアで、Napsterという会社ができていましたし、WinMXというソフトウェアもありました。
これらの技術に刺激を受けた金子勇さん、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)では47氏という名前で公開したソフトウェアがWinnyでした。
P2P(ピア・ツー・ピア)という技術で、後のSkypeや仮想通貨のもとになる技術でもあったわけです。
ちなみにWinnyWinMXのMXを一文字ずつずらして小文字にしたと言われています。
このソフトは大変良くできていて瞬く間に広がり、そこでやり取りされるファイルは著作権を無視したモノが大量に出回りました。
著作権保護団体からの突き上げがあったのか、そのあたりは謎ですが、この優れたファイル共有ソフトを作ったやつがけしからん、ということになったのでしょう。
サイバー警察のトップを目指していた京都府警はこのソフトの作成者を逮捕し、起訴したのです。
そして裁判では、京都地裁では有罪となり、控訴。
最終的に最高裁まで争うことになり、結果無罪を勝ち取るわけですが、そのために要した時間は7年半に及びました。
当時プログラマーとして脂の乗り切っていた金子氏は裁判などのために行動できず、貴重な時間を潰してしまいます。
更にはこの映画でも語られていますが、いくら優れたソフトウェアやアイデアを具現化しても、それが「悪いこと」に使われてしまったら、ソフトウェアの作成者も逮捕されてしまうということです。
こんな馬鹿なことはありえません。
映画でも弁護士の壇さんのセリフにもあります。
著作権は守られるべきものであるというのは一致するところですが、著作権を犯すことに使われるソフトウェアも犯罪の片棒を担いでいるので罪があるという論理です。
この映画では、ナイフで人を指した場合に、ナイフを作った人も逮捕するという例えになっています。
それ以上にインターネット普及に尽力した方は、この事件に対して、Winnyが「著作権法違反幇助」という罪で有罪なら、インターネットを広めた私も有罪ということになると述べておられました。
違反幇助というものすごく曖昧とした中で範囲を広げてしまったら、全ての人間には罪があることになります。
こんな曖昧な理由で逮捕した京都府警は一体何を考えていたのでしょうか。
彼を逮捕するように指示した上のものがいるはずなのですが、この映画でも言われていたように「トカゲの尻尾切り」、つまり末端は切り捨てられて、本当の主は闇の中なのでしょう。
私が思うに、この当時、この世の中の先を読めた人がいなかったということです。
特に司法、立法、行政のいずれも。
これらは近代国家の骨組みであり、未来を決める大事なところなのですが、時代の本質を全くわかっていません。
有能な技術、人材をこんな風にしてしまう日本はなるべくしてなったのが現在のIT後進国の姿だと思っています。
裁判官を始めとした法曹界の人たちは当時インターネットに関することの知識は乏しかったでしょう。
インターネット、IT、コンピューターの可能性くらいは理解していたものの、未来は想像できていなかったとしか思えません。
意地でも逮捕したかった京都府警は日本経済にとって、とてつもなく巨大な負債を残してくれたということです。

日本はチャレンジャーが生まれません。
ベンチャーも育ちません。
その理由の一つに、減点主義があり、出る杭は打たれるといういや~なところがありますよね。
失敗したものを指さして、「そらみたことか」というのが、先生や親から褒められ、良い学校に行って、良い就職先を見つけた人間、あるいは立派な役人になった人間です。
彼らは減点主義の日本における勝ち組です。
ミスせず、周りが自滅するのをしたり顔で見ているだけ。
そんな人物ばかりでイノベーションなんて生まれるわけがないでしょう。

脱線しました。
今となってはWinnyは過去のもの。
Winnyの作者をつかまえても、しばらくは似たようなファイル共有ソフトで違法コピーソフトや著作物がインターネットを通じて大量に流れました。
そういう時代だったんです。
そしてソフトウェアエンジニアが金子氏のようになりたくはないと思ってしまうと、もう発展はないでしょう。
大体ITをイットと読む総理大臣とか、USBメモリの存在を知らない大臣とか終わっています。
知らなければ知る努力をしないといけないし、そういう立場の人間のはずです。
自分が知らないから、そっち方面は「オタク」たちがやっていればいいんだ、くらいに思っていたのでしょう。

世界とソフトウェアのアイデア、技術で競っていたはずが、国がこういう才能を潰していったんです。
投資すべき先を間違え、死んでいくべきゾンビ企業を税金で延命させたりして平成の世の中は浪費されてしまいました。

エンジニアを大事に扱わないし、現場の仕事を軽んじている風潮がなくならないですよね。

ぜひ興味がある人には見てほしい映画です。
そして失われた30年というのがこういうところにも原因があったということを思い返してほしいですね。

あらすじは映画のサイトでも原作本でもいいと思います。
東出昌大さん、三浦貴大さんともに、俳優陣も頑張っている作品です。
とりわけ、大物弁護士を演じていた吹越満さんが格好良かったです。
そして京都府警の担当者を演じていた渡辺いっけいさんもさすがの憎たらしさぶりを発揮していました。
この映画にはもう一つの伏線として愛媛県警の裏金事件も絡んできます。
それを内部告発した警官を演じていた吉岡秀隆さんも渋かった。
この裏金事件は、警察、マスコミともに握りつぶそうとしていたのですが、なんと証拠となる文書がWinnyを使っていたパソコンでウイルス(いわゆる暴露ウイルスというやつですかね)感染し、そこから流出したんですね。
なんとも皮肉な話です。

matusima745.hatenablog.com

hinaちゃんさんが、この映画を封切りと同時期に紹介してくれました。
私は1年を過ぎてからようやく見ました。
もっと早くに見ればよかったです。
ちなみにhinaちゃんさんのブログは映画の内容について詳しく記載されていますよ。




Copyright ©悪魔の尻尾 All rights reserved.