悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

経済を読み解くための宗教史 宇山 卓栄

こんなに良い本があったとは。
宗教というとその宗教の考え方や神、聖書について書かれているものが多い。
そもそもなぜ宗教が必要なのかという点を歴史を踏まえることで理解していく。
引用~

すべての宗教は経済の文脈で捉えると、おのずとその本質が明らかになります。

逆に、宗教を倫理規定や神学理念だけで捉えている限り、その本質は見えてきません。
要はカネなどの富の分配にかかわる処世術のようなものです。

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この文にあるようにこれまでの宗教について書かれているほんとは切り口が違う。倫理規定や神学理念ばかりが書かれている本が多いためか、これまでこんなにすっきりと書かれているものはなかった。


日本人には宗教というものが根付いていないので、そういうことを考えること自体あまりない。
この本を読んで、すっきりしたので良かった。
キリスト教イスラム教という世界的に信者の多い宗教は影響力も半端ないが、そもそも宗教とは利害調整のために必要だったもの。

引用~

神聖ではなく、俗世そのもの

 

宗教の本質とは何でしょうか。

 一言で言うならば、それは「利害調整機能」です。

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そして政治をつかさどるものにとっては民衆を導くうえで非常に役立ったので利用していたという背景がある。
そういうことを前提に記載されていて、神を利用して信者を増やし、影響力を強めることが為政者にとってどれだけ大事だったのかということが分かるようになっている。

十字軍戦争やイスラム教の宗派の対立もこの本では信仰をめぐる戦いから始まったのではなく、経済利害の対立から始まったものと断言している。信仰の対立はむしろ後付けの理屈だと片付けている。痛快である。

 

本当に宗教のことを何も知らなかったと思えるのは、キリスト教イスラム教も元をたどればユダヤ教であり、これらは同じ神ををあがめているという点では同じということ。そんなことも知らないの?と教養のある人には笑われてしまいそうだが、そういう根本的なところをわかりやすく書いている。

ところどころにある、豆知識みたいなものも「へぇ~」とボタンを連打したくなるようなものが多かった。

目次の序章の部分だけでもこの本の本質が垣間見える。


序章 経済×宗教を理解しよう!
1 経済の発展に宗教はかかせない
・富を巡る争い
・神が経済の基盤を創る
・剝き出しの本能
・宗教と経済のスパイラル
・ピケティの定式の呪縛
2 日本人の無宗教が世界を救う?
・「ミックス宗教」だから成長した
無宗教というアドバンテージが未来を拓く鍵となる
・本当に日本人は「寛容」なのか?
3 すべては富のため、利害調整のための装置
・神聖ではなく、俗世そのもの
・富のために戦う

 

 

 

経済を読み解くための宗教史

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