3編の小節からなる作品。
いずれも女性の超能力者が主人公。
とは言え、彼女たちはその超能力を使ってすごいことをしているというよりも、いかにこの能力の存在を見つからないようにしながら普通の人と同じ生活をしているのかという点に主眼が置かれた作品ばかり。
「朽ちてゆくまで」
生まれながらにして未来のことを予知してしまう能力者が主人公。
しかし、両親を失ってしまい、祖母に育てられる。
そしてその祖母がなくなったところから物語は始まる。
彼女は幼いころ予知能力を持っていたが、その能力を失うと同時に記憶も失ったという少女。
なんとも言えない作品。
そんな能力が欲しくて生まれたわけではなく、その能力ゆえに両親とともに苦しんだ過去が次第に明かされていく。
「燔祭」
念力放火能力を持った女性、青木淳子の登場。
生まれながらに備わった特殊な能力。自らを武器とし、その利用方法を考えてきた。
妹を殺された青年の敵を討つために、彼に近づき、その力を見せる。
後の「クロス・ファイア」の作品とつながる元になった作品。
やはりこの3つの小説の中では一番パワフルである。
「鳩笛草」
透視能力を持つ女性が刑事となり活躍する。という単純な物語ではない。
すごい能力なのだが、その能力と折り合いをつけながら、役立てたいという気持ちを持つ主人公、本田貴子。
しかし徐々にその透視能力に陰りが生じる。同時に自身の体調不良も。
いずれの作品も能力の素晴らしさだけではなく、その能力ゆえの辛さ、悲しさを全面に押し出しているような物語が多い。
特に「朽ちてゆくまで」はちょっとしたホラーのような怖さがある。
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2011/07/12
- メディア: 文庫
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