なかなかまとまった時間がとれず、読み切るのに時間がかかってしまった。
サラリーマンとして仕事の面白さと挫折を共に経験し、新たな一歩を踏み出す二人。選挙、それも国政に無所属で躍り出るという無謀とも思える戦いを見事に描ききった作品。
若く熱く、青臭い部分も多く含んだ好漢天知達彦が代議士を目指す。そして、会社を辞めて食を失っていた駒井健太郎を秘書にスカウトする。そこからこの選挙戦を通して描かれる人間ドラマである。
高校時代の仲間やほのかな恋心、そして新聞社を辞めることになった達彦と商社を辞めることになった健太郎がそれぞれかかわる秋浦市の老人ホーム建設計画。更には天知の祖父が元知事で辞職することになった汚職の真実とは…。
そういう色々なことが絡みあいながら選挙を通して描かれている。そこには日本における選挙、政治、というものを見つめ直す部分であったり、現在の選挙制度の問題を虚構とはいえ、かなり具体的に書かれていて興味をそそられる。
小説ではあるが、そこには実在する自民党、民主党というのが既存の政党として描かれており、組織として票を稼ぐ、つまらない政治屋として描かれている。まあ、現状を見ればそのとおりなのだが・・・・。
さて登場人物はそれぞれに自分の人生を生きているが、主人公の駒井健太郎と天知達彦が非常に魅力的なキャラクターである。
にもかかわらず、彼らの周りの女性はどうしようもない。達彦とは相思相愛ながら胴仕様もない結婚をしてしまったヒロインのサキ。そして主人公の女房は義理の父母共に憎まれ役を一身に受けている。政治家の女房はもちろん、政治家の秘書の妻というのもなかなかにつらい立場なんだろうと思う。
政治という大きな理想と、実際の人間の小さな事柄。それらは一見無関係にも思えるが、何一つ無関係なことはない。
どうやら私もこの小説で、達彦の熱い言葉に毒されたようだ。
- 作者: 真保裕一
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 2002/01/01
- メディア: 単行本
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