アメコミをあまり見ない人でもバットマンは知っていると思う。
バットマンとスパイダーマン、スーパーマンといったあたりは、もはや一般教養レベルのアニメキャラクターと言って良い。
特撮の世界でいうなら、ゴジラやウルトラマン、仮面ライダーみたいなものだ。(オッサンの思い出補正が多分に入っております)
ともあれ、そのバットマンにおける悪役といえば、彼、ジョーカーである。
白塗りの顔の道化師というイメージで、なんともいやらしい男である。
先日見たのが、このジョーカーという映画。
Amazonでも、U-Nextでも見られるのだが、別料金が必要。
Neflixでは会員であれば視聴可能。
(2021年1月14日現在)
映画情報
2019年10月公開のアメリカ映画
上映時間 121分
監督 トッド・フィリップス
制作費 5500万ドル
興行収入 10億7000万ドル
これだけを見てもいかにヒットして儲かった映画なのか?ということがわかる。
ジョーカーの制作が決まっただけでも、ファンの中からは非常に高い関心を持たれていた。
アメコミのヒーローが人気があるのはともかく、ヴィランもものすごく人気があるのだが、その中でもトップクラスの人気を誇るのがこのジョーカーである。
制作費は57億円というのも邦画では考えられないほどの費用だが、ハリウッド映画にとってはそれほど予算をかけたほうでもない。
興行収入は1120億円ほどにもなり、とんでもない収益が得られたのである。
スケールが違う。
記録的な大ヒットの「鬼滅の刃」ですら350億円ほどなので、その凄さがわかる。
同時に、ほぼ日本国内の収益となる、「鬼滅の刃」の凄さも改めて感じる。
ちなみにジョーカーは日本では50億円くらいの興行収入だったそうである。
あらすじ ネタバレあり
バットマンの舞台になるゴッサムシティであるが、いわゆるダークなイメージがまだない頃の話である。
バットマンは登場しない。というか、まだ相当に幼い頃である。
なんと言ってもジョーカーが誕生する前の話である。
不況で労働者の鬱憤が溜まっていた70年代のゴッサムシティ。
青年であったアーサー・フレックは大道芸人であった。
全く注目もされず、待遇も良いとは言えない、日陰者の人生であった。
愛する母から言われいてるのは「笑顔」。
「笑顔」を忘れずに生きていくことがアーサーにとっては義務でもあった。
カラダの悪い母の介護と安い賃金の道化師。
しかし、笑顔で人々に笑いと喜びを届けようとしても、世間は甘くなく、少ない持ち金を若者たちにカツアゲされてしまう。
アーサーは同僚から護身のために貰った拳銃。
銃を忍ばせてバス移動しているアーサーだが、子供に笑顔を向けて笑うが、その母親に気味悪がられる。
そして彼は一枚のカードを渡す。
そこには、脳の障害で笑いの発作が止まらなくなることがあるため、理解してくださいということであった。
帰宅後、アーサーには介護が必要な母からいつも言われる。
手紙は届いていないのかと。
母は30年以上前に使用人として働いていた富豪のトーマス・ウェインに手紙を書いていた。
その内容は生活の援助の依頼であった。
アーサーは会社の指示で病院でのパフォーマンスに出向く。
そこで踊っていたが、懐に忍ばせていた拳銃を落としてしまい、大騒ぎになる。
アーサーはピエロの姿のまま闘争するものの、会社はクビになってしまう。
帰宅途中の落胆したアーサーの姿を見て、若いビジネスマンたちがからかう。
アーサーの笑いの発作に、からかいはエスカレートし、アーサーを若いビジネスマンたちは袋叩きにする。
アーサーはついに懐の銃を抜いて彼らを殺してしまった。
この事件はニュースで大きく取り上げられた。
そしてこのビジネスマンたちはトーマス・ウェインの会社の社員でもあった。
トーマス・ウェインはまだ見つからない犯人のことを、ピエロに扮装して悪事を働く人間だと述べた。
このコメントは当時の貧富の差に不満をつのらせていた労働者たちの怒りを買った。
そして同時にこのピエロを社会のヒーローとして祭り上げてしまった。
アーサーはアパートの住人であるシングルマザーのソフィーと知り合う。
そしてコメディアンとして場末のステージに招待する。
そこで彼はお笑い芸人としては失態を演じるが、発作が発動し、笑い続ける。その姿を目にした人気テレビ番組の司会者であるマレーの目に止まり、彼はマレーの番組に出演することが決まった。
アーサーは母の手紙をいつも出すように言われていた。
そして母の手紙を覗き見すると、そこにはアーサーがトーマス・ウェインの子供であると書かれていたのである。
アーサーはトーマスに真偽を確かめるために、ウェインの屋敷に向かう。
執事のアルフレッドに告げるが、取り合ってもらえないのである。
そしてついにトーマス本人に直接聞いてみるのであるが、完全に否定された。
それどころか、彼女には虚言癖があり、そもそもアーサーが彼女の養子であることを告げる。
アーサーは真実を確かめるために、母が入院している病院を訪ねる。
そして自身が養子であること。
また母の交際相手の暴行により脳に障害をおってしまったことが記録されていたのを知る。
アーサーは母の病室で母に枕を押し付けて窒息死させるのである。
アーサーのアパートを訪れた元同僚も殺害し、アーサーはついに狂気へと走っていく。
徐々に警察は容疑者としてアーサーを絞り込んでいく。
そういう状況の中、マレーの番組に出演することになったアーサー。
アーサーはやはりウケなかった。
司会のマレーはその場を取り繕おうとするが、アーサーはビジネスマン殺害の犯人が自分であることを告白する。
あまりにも突然だったので、マレーは笑いでつまらないジョークだとするが、アーサーは彼を射殺してしまうのである。
スタジオはパニックになるが、TVでの報道がさらに市民の暴動へと結びついていく。
トーマス・ウェインは暴動の町から避難しようとするが、ピエロの紛争をした暴徒に襲われ、妻とともに命を落とす。
残された幼い息子こそ、将来のバットマンであるブルース・ウェインである。
逮捕されパトカーに乗せられるアーサーであったが、暴徒となった人に救い出されるほど祭り上げられることになった。
再び逮捕され、アーカム・シティ病院でカウンセリングを受ける。
不敵な笑みを携えたジョーカーの誕生を物語っている。
感想と見どころ
アーサー・フランクを演じるのは、ホアキン・フェニックス。
脳に障害をおった哀れな男性が、狂気に姿を変えていくところを熱演。
さすがに実力はの演技は素晴らしい。
脳の障害もあり、妄想もあることから、大変難しい役どころであるが、見事に演じきっている。
人気テレビ番組の司会者であるマレーを演じるのも世界トップの演技力を持つ名優ロバート・デ・ニーロである。
あんなシーンで終わってしまうとは、びっくりした。
それくらいのインパクトをこの映画で見せたかったのかも知れない。
演技力のある二人の名優。
特に主演のホアキン・フェニックスはアーサーからジョーカーに代わっていく姿を見事に演じきっている。
ロバート・デ・ニーロほどの俳優が、マレーというテレビ司会者役で出番自体もそれほど長くない。
それだけに射殺されるというシーンはものすごいショッキングである。
インパクトはものすごくあった。
何よりもこの映画、ジョーカーというタイトルなのだが、ヴィランとして登場するジョーカーが生まれるまでを描いた映画である。
狂気をまとうまでの流れが、見事に描かれているが、そのどれもが悲しすぎる。
そしてそれはジョーカーという人気のあるヴィランの背景にもなっている気がする。
そう、普通の人間である。
彼は決して体力的にも恵まれていないし、頭脳が優れているわけでもない。
親はわからず、母と思っていた人間も血縁ではなかった。
そしてその母の交際相手に虐待を受けていたこと、その虐待に寄って障害を負ったことなど、どれも悲しすぎる人生なのである。
だれもが彼と同じ境遇だったら、彼と同じ狂気をまとってしまう可能性は否定できない。
なんとも悲しい映画だけに、後味が良いとは言い難い。
しかし、映画ファンなら、見ていると思うし、見るべき映画でもあると思う。