悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

ジェノサイド 高野和明

スケールの大きいストーリーで、読み応えがあった。
アフリカのピグミー族から生まれた新人類。
通常の現代人の知能をはるかに超えた別の種族。
そして新しい優れた種が生まれ、劣る人間がその種に淘汰されるという「ハイズマン・レポート」。
その対策として超大国アメリカがとった行動とは、隠密に新種族を排除、つまり抹殺することであった。
この大きなストーリーの中に冴えない大学教授とその息子が巻き込まれてしまう。
古賀誠治と古賀研人の親子。
古賀教授とアフリカで友人となった富豪の人類学者ピアース。
保護すべき新人種の3歳児のアキリ(ヌース)。
そしてヌース抹殺の任務を請け負う傭兵チーム。
傭兵チームのリーダーは不治の病を抱える息子を持つイェーガー。
イエーガーの息子を救うことができるのは高い知能を持つ新人種のみ。
彼を抹殺するのか救うのか。
アフリカの今後を舞台に繰り広げられる激しい戦闘。
そして日本国内で新人種が作成したソフトウェア「GIFT」を使っての治療薬の作成。
小説ならではの展開と構想だが、あくまでこういう小説としてしっかりと描くことだけにして欲しかった。
多くの人からの批判もあるように、ちょっと政治的な意見というか、作者の考えが反映されすぎている描写があり、その表現が必要だったかどうかを考えると不要だし、その辺りが非常に残念だった。
南京大虐殺に関しても事実の確認をしたかのごとく表現していたり、日本人傭兵ミックの壊れっぷりとは対照的に韓国人留学生の正勲を素晴らしい人物として描いていたりとか、何か読者に対して刷り込もうとしているがごとく気持ち悪かった。
リアリズムを追求した結果そう描いたのなら良いが、そうは思えなかった。
構想、ストーリー自体は悪くなかっただけにほんとうに残念に思う。

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