大沢在昌の作品は「アルバイト・アイ」が初めて読んだ作品。非常にテンポが良く面白い作品だが、軽めの作品。軽めだが、しっかりとハードボイルドの雰囲気は味わえるようになっている。ありえない話の連続で現実味がないのだが、リズムよく展開していくストーリーでドンドン読み進められる。5冊ほどこのシリーズは読んだと思う。
今回読んだのは氏の代表作である「新宿鮫」。これも小説の中の世界観がよく出ているが、アルバイト・アイよりはまだリアルな感じがする。序盤はそれほど盛り上がらないが、改造銃の正体がわかってくるに連れテンポが上がってくる。そして改造銃の製作者である木島のアジトを突き止めたシーンでは壮絶なアクションシーンがある。
ただし、この主人公の新宿鮫こと鮫島警部は決してスーパーマンではない。喧嘩慣れしているわけでもなく、特別強いわけでもない。国家公務員の上級試験をパスしたいわゆるキャリア組だったのだが、そのレールからは大きく踏み外したはぐれ刑事。もともとそういう出自だけに当然頭はいい。そして結構二枚目な感じがする設定である。刑事の彼女がまたイカしている。駆け出しのロックシンガーでロケットおっぱいの持ち主の晶。アキラではなくショウと読むらしい。現実にはありえないと思いつつもあり得る?と思ってしまうような微妙な感じがハードボイルド。ラストシーンも格好良かった。
新宿鮫はシリーズで既に10作品ほど出ているようである。その原点とも言うべき作品。主人公の設定が小説ならでは。しかし超人的な能力を持っているわけではなく、極普通の人間。ただ、ヤクザ、犯罪を憎む思い、正義感は人一倍強いという設定。相棒を持たないはぐれ刑事。一匹狼である。
改造銃と警察官殺害事件を追って展開されるストーリーだが、鮫島警部がなぜ相棒を持たない一匹狼なのかがわかる。シリーズを読み進めていく上では欠かすことのできない作品だろう。
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