
Amazonプライムビデオで見ました。
割と最近の出来事で日本ではそこまで話題にはならなかったものの、本国イギリスではかなり話題になった内容らしいです。
それもそのはず、500年以上遺骨が見つからなかったリチャード3世の遺骨を発掘し、彼の名誉を取り戻したという大ニュースでした。
映画の概要
監督:スティーヴン・フリアーズ
脚本:スティーヴ・クーガン/ジェフ・ポープ
製作:スティーヴ・クーガン/クリスティーン・ランガン/ダン・ウィンチ
原作: フィリッパ・ラングレー/マイケル・ジョーンズ
製作国:イギリス
公開:2022年10月7日(イギリス)/2023年9月22日(日本)
上映時間:108分
興行収入:1,879,734ドル(イギリス)/4,518,569ドル(世界)
キャスト
フィリッパ・ラングレー:サリー・ホーキンス
ジョン・ラングレー:スティーヴ・クーガン
リチャード3世:ハリー・ロイド
リチャード・テイラー:リー・イングルビー
シーラ・ロック:アマンダ・アビントン
あらすじ
フィリッパ・ラングレーは筋痛性脳脊髄炎(ME)という難病を患っています。
ある日、職場で当然選ばれるであろうと思っていたプロジェクトから外されます。
上司に不満をいいますが、覆りません。
その後、息子と見に行ったシェイクスピアの劇「リチャード3世」。そこで息子の同級生の父親が悪役として描かれる「リチャード3世」を当たり前のように話しているのを見て疑問に思います。
彼女はリチャード3世が本当に王位を簒奪した悪人なのか?ということに疑問を抱きます。偉大なるシェイクスピアですが、彼は劇作家であり、事実を知っていて物語を書いたわけではなく、劇作家ならではの脚色や表現の誇張があったのではないかと考えるのです。そして彼女は本来、王として認められるべきリチャード3世が不当に扱われているのではないかと考えるのでした。
それもそのはずで、フィリッパ・ラングレーにはリチャード3世の姿が目の前に現れているのです。その日から仕事はそっちのけで、リチャード3世の文献を読み漁ります。
世間では同じようにリチャード3世の名誉回復を求める歴史ファンがいます。いわゆるリカーディアン と呼ばれる人たちで、彼女はその会員となります。そしてリチャード3世の墓がないどころか、どこで死んだのかも明確でないことを知り、ますます彼の名誉を挽回する気持ちを強くするのです。
フィリッパ・ラングレーと夫のジョン・ラングレーは別居中ですが、二人の息子たちを通して家族間のつながりはあります。息子たちは就学児であり、経済的にも彼女の職というのは重要です。
一方の夫のジョンには新たな女性がいるのですが、冷めた二人の関係には障害になっているわけではありません。ジョンは自分の息子たちのことはよく面倒を見ており、毎日の送り迎えや食事の世話など献身的です。
ともあれ、仕事を休んでリチャード3世の名誉回復に生きがいを見つけた妻に対して、最初は否定的でしたが、息子ともども協力します。
フィリッパは目の前に現れるリチャード3世によって導かれるように、彼の死んだ場所を特定していくのです。
そしてレスター市の駐車場にRと書かれている場所を発見。彼女はここがリチャードが眠っている場所だと確信するのです。
さて発掘ですが、そんなに簡単に市の駐車場を掘り起こしてよいはずがありません。資金も許可も必要です。フィリッパはレスター市の女性議長の前で熱弁を振るうのですが、大学側は彼女を素人のリカーディアンに過ぎないただの歴史ファンとして見下しています。しかし女性議長の鶴の一声?で彼女の提案は通り、発掘調査することになるのです。
大学側にはリチャード・バックリーという考古学者がおり、彼はご都合主義な一面を持つ研究者でした。当初は予算が出るから彼女に協力。しかし、大学側の予算を管理するリチャード・テイラーによる大学側の方針転換でこの調査は中止となり、リチャード・バックリーは大学をクビになります。
しかし発掘に執念を燃やすフィリッパはネットで資金集めに成功し、発掘調査を行うことになります。
しかし、最初のレーザー調査では芳しい状況ではありません。彼女は駐車場のあの「R」の位置こそが大切な場所だと言い張るのですが、発掘をする考古学者リチャードは否定的です。しかし、今回の発掘調査は大学の調査費用ではなく、フィリッパが集めてきた資金であり、彼女の意見も尊重されることになります。
そしてRが書かれた駐車場を発掘するや遺骨が見つかるのです。しかし考古学者リチャードは、歓喜するフィリッパを否定し、これは修道士の骨であるとして、それ以上の発掘をしようとしません。
DNA検査の結果、発掘された遺骨はリチャード3世のものでした。しかし彼女は発掘者ではなく、レスター大学と考古学者のリチャードが栄誉を受けます。そして大学側はこれまでのリチャード3世の王位簒奪者としての考え方も否定しようとはしませんでした。
しかし、市民たちはフィリッパこそ本当の発掘者であり、彼女の意見を聞きたがるのです。彼女はそこでリチャード3世に付いての考え方を述べ、称賛を受けるのでした。フィリッパは、英国王室から勲章を受け、ついにリチャード3世は政党な王であるとされ、彼の墓に王家の紋章を刻むことになったのです。
感想
実話ベースです。2012年という近年の出来事であり、この映画が完全に作り物というわけにはいきません。
しかし映画として面白さを出すために、大学側の悪者を作って、悲劇の発掘者フィリッパという物語を面白く仕立て上げています。
主演女優はサリー・ホーキンス。名作「シェイプ・オブ・ウォーター」の主演女優さんで、今回も彼女のためにあるような映画だと思います。
いい味を出しているのがこの作品の製作と脚本にも加わっているスティーブ・クーガン。フィリッパの夫を演じています。
それにしても一般人が、発掘場所であるレスター市と掛け合い、大学側を動かし、クラウドファンディングで資金を募って発掘調査をしたという事実に驚愕です。
500年以上もの間、英国の歴史の謎の一つでした。国の王の骨が見つからず、死んだ場所も特定できてないという謎は、同時に劇作家シェイクスピアによって簒奪者の汚名を着せられることになりました。
シェイクスピアが偉大な劇作家であることは間違いないですが、歴史家ではなく、彼が描いたのは演劇の脚本。
そしてそれは当時の王政のプロパガンダということを考えると、シェイクスピアのリチャード3世は完全なる創作ということになります。
歴史は権力者によって書き換えられるといいますが、その書き換えられた歴史が小説という魔法によって事実と思ってしまうのも人間です。
偉大な作家の作品はそれだけのパワーがあります。
そう思うと司馬遼太郎さんは司馬史観と呼ばれるほどの影響をもっています。
歴史家を名乗る人でもかなり影響を受けているのではないかともいわれていますし、教科書などにも影響があるのではないでしょうか。
まあ、読者の一人でもある私も史実よりも歴史小説の影響をやはり受けている一人だと実感します。
ともあれ、息子と妻と3人でこの映画を見たのですが、もともと見ようと行ったのは妻。オースティンの「自負と偏見」のファンである妻は、こういったドラマが好物ですね。
一方息子は、かったるいなあ、という気持ちがありありであまり見たくなさそうでした。彼はいつもそうなのですが、実際に見始めるとのめり込むタイプ。私がパソコンで映画を見ていて、そちらに夢中になっているといつしか後ろから覗き込んで見ていたりすることがあります。(なのであんまり変なものばかり見れない?)
ともあれ、息子も妻も大変好評な映画でした。
追加すると俳優のベネディクト・カンバーバッチはDNA検査の結果、リチャード3世の子孫であることが判明したと言われています。
なんか500年以上もの歴史が時を飛び越えてきた、という気がしました。