悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

桜ほうさら 宮部みゆき

時代劇。
江戸の町人長屋に住む若い浪人の話。
メインテーマの内容が非常に裏がないしい部分がある。
主人公古橋笙之介は武芸は得意ではなく、文芸には少し秀でたところがあるが、父に似て優しい気質。
長男の勝之介はその逆で武芸に秀で気性も荒い。
彼らの父母も勝ち気な正確、悍馬と言われる母の里江と臆病者とも言われる父宗左右衛門のそれぞれの性質をそのまま受け継いだとも言える。
収賄という最も縁遠いとも思える汚職の濡れ衣で詰め腹を切らされた父。
その真相を明かすために江戸にやってきた次男古橋笙之介が江戸の長屋で代書屋を生業としながら次第に人間として武士として成長していくさまを描いている。
父の死の真相というメインテーマはかなり重く、悲しすぎる物語だが、そのメインテーマを取りまく青侍「笙さん」と長屋の人々との話が人情味があってとても面白い。
そして色恋の話も散りばめられ、「笙」さんの人となりが非常に魅力的である。
私は彼のように手先は器用ではないけれど、武芸に秀でて権力欲が強いというタイプではないので、どちらかと言うとそういうタイプなのかな?とも思ってしまう。
鈍いところも。青臭いところも似ているのかもしれない。

時代劇でありながら、メインストーリーはきちんとミステリー仕立てになっており、最期まで読むと、「そう来るか」というオチがある。
残念ながらではあるが。
個人的には腹を切った父に同情し、「悍馬」の母は憎らしさしかなかったが、物語終盤で登場するキーマンが話す言葉、「たったひとつの文書で信用を失っていまう。その程度の人物」という台詞がつらすぎる。
まさに私がその程度の人物であると言われているかのように…。
父にとっては守るべきもの、守りぬかねばならないものがあったのでそうせざるを得なかったのだろうが。

桜ほうさら

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