悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

新人研修

新人の面倒を見ることは今まででもあった。
私自身新人の時からである。
恐ろしい世界だと思う。
今でこそ、ある程度経験は積んでいるが、もともとこの業界の人間でもない。
家業を廃業し、今の会社で少しの間、働いた。
待遇はあまり良くなく、不安があったので別の会社に就職。
サラリーマンになり働いていたが、そこが倒産したために恥ずかしながら今の仕事に舞い戻ってお世話になることに。
家業を辞めたのは三十台後半。たしか37歳だったはず。
そこで職安などに行って仕事を探す経験もした。
随分と冷たいことを言われたものだ。
結局職安で仕事を紹介してもらったことはない。職業安定所という役所は役所として必要だが、あまり頼りにならない。
実感である。

舞い戻った職場で命じられたことは粛々とやるのみである。
やったことのない仕事でも短い研修期間で覚えてなんとか形を保たないといけない。
難しいことのようで実は簡単であり、簡単そうに見えてなかなかできないことでもある。
私が今こんなに偉そうに言えるのはがむしゃらにやって何とかなったからかもしれない。
顧客対応なんて経験もなく、電話での対応なども専門家でも何でもない。
しかし仕事となればプロとしての自覚も必要。
お客さまにとっては新米だろうが、そんなことは関係ない。
会社の指令により他の会社のサポートをするためにその会社に行く。
そこで入って1ヶ月ほど。うち研修が2週間ほど。
そんな私が次の新人の研修をすることになった。
信じられないがそういうものである。
自分で向いていると思ったことは一度もない。
結果として向いているということなのだろうか。本音で言うとこの仕事自体は大嫌いである。
しかし仕事をさせてもらっていると思うと好き嫌いにかかわらずありがたいと思わねばならない。
同窓会で立派な仕事をしている人を見ると羨ましいと思うことも多々ある。ランクをつければかなり低い自分だが、仕事に対する誇りは持っているつもりである。

さて、長い前振りになってしまった。
新人がよくやめてくれる。
研修中にもよく辞める。まあ、ある意味それが正解と思うこともある。
辞めるなら早いうちに辞めたほうがお互いのためでもある。
研修をしていても向いていないという人もいる。期待を込めている人もいる。
その通りにならないことも多い。
向いてないのにいる人。期待していたのに辞める人。
たかが1ヶ月位の研修で人間の能力すべてが分かるわけではない。
研修中はもちろん、研修が終わっても仕事に対して真面目に向上心を持ってもらえる人ならいいと思う。
なかなかいない。
若い人は飲み込みも早く、私達の仕事には向いている。
私のような年配の人間は本来この仕事に向いていない。もちろん経験者は別だが、経験者も場所が変われば大きく違うのが現実。プライドがあって研修も斜に受けているような人もいるし。
若い人はあまり求人に来ないのか、来てもすぐに辞める人が多い。
そして年配の人は能力的にあわないのか、無理だと思う人が多い。
少々小生意気で鼻っ柱が強くても能力があればそういう人材は使っていきたい。
逆に職場内での人当たりがよくても仕事ができなければ、置いておくことは難しい。
本当に人当たりのいい人はこの仕事は出来るはずなので、長く付き合っていれば本当の性格がわかってくる。
歳をとっている人は化粧が上手になるように人付き合いも表面上はうまくなる。
職場内での人付き合いも重要な要素だが、それだけではNG。ゴマすりサラリーマンなんていうものを置いておくほど余裕のある職場でもない。

新人研修を担当してみると面倒も多い。
しかし何よりダメージは勝手にやめてしまわれること。
こちらも顧客対応と同じように新人にはそれ相応の気を使いながら研修にあたっている。
研修に使ったエネルギーを思うと虚しさが大きく、精神的にもダメージが大きい。
仕事だと思って割り切るしかないが。

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