悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

楊令伝 三 北方謙三

幻王として北方で恐れられていたのが楊令だった。その楊令が梁山泊に合流し、ついに頭領になった。若いが頭領としてみんなが望んだ結果である。この物語の主人公とはいえ、出来すぎの感じがあるが、物語はある意味極端に描かれていたほうが面白い。そして新しい拠点を梁山泊と名付けるのである。
南方で方臘が宗教の力によって宋へ反旗を翻す。そこに入り込んでいるのが呉用。この作品では呉用は嫌われ者として描かれている。梁山泊での死にぞこないである。死ぬべき場所を探しているという意味では右手首から切り落とされた武松と同じようなものかもしれない。この第3巻は趙仁と名乗っている呉用とその主人方臘が全面に出てきている。何やらおぞましい感じも漂う宗教家として。そして北方の金の舞台として楊令こと幻王が電光石火の如く遼国を侵略する。宋は最強の禁軍を分断し盟約に従い、北方の遼を攻めると共に南方の宗教反乱を沈めるために出兵する。
北には趙安、そして南に向かうのは童貫である。童貫との決戦を控える宗教動乱のボス方臘がなんとも凄い。作者の北方謙三が描く宗教家は現代人である我々にはとても受け止められないが、宗教というものには麻薬のような人間に入り込む力があるのだろうかと思ってしまう。
子午山の二人もついに下山。そして梁山泊に加わる。花飛麟と張平である。彼らの活躍も今後は楽しみ。本当にこの物語は前作の水滸伝の続編であるが、主人公からして2世。続々と登場する2世たちの活躍が見ものだ。

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