織田信長の居城、安土城築城の物語である。
主人公は総棟梁、岡部又右衛門。とその息子以俊。
熱田の宮大工だった頃より信長に仕えたが、職人魂がすごい。
木曾檜を伐採し、安土へ運ぶ杣(そま)や石工の清兵衛などの職人たちの執念、仕事に対する誇りのようなものを感じる。
息子の以俊と間者の使命を帯びた女中うねとの情事の描写が生々しい。
こういう作品で、この部分はここまで描く必要があったんだろうか。
武士が主役ではなく、大工の棟梁というのが主役で違った視線で描かれているのが他の時代小説と違う。
しかし、武士よりもある意味で武士らしく頑固な人たちの生きざま。
幾多の苦難を経て落成した安土城。
互いにいがみ合っていた親子に深いきずなが生まれ最も幸せな局面を迎えるが、本能寺の変を機に父、又右衛門が死に、それも失ってしまう。
家にも家相というものがあるが、安土城はそういった意味では信長にとって繁栄をもたらす城ではなかったのだろうか。
当時の常識からみれば奇想天外な安土城。それを安易に焼いてしまったのが悔やまれる。
- 作者: 山本兼一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/06/01
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