悪魔の尻尾

みなさ~ん、元気にしておりますか?

用心棒 黒澤明

荒野の用心棒というクリント・イーストウッド主演、セルジオ・レオーネ監督のマカロニ・ウエスタンが好きで、何度も視聴しています。
しかし考えてみれば、この映画はパクリでありまして、大ヒットした後に東宝に訴えられてしまいます。
イタリアの映画監督であったセルジオ・レオーネは日本の映画「用心棒」を見て、痛く感激し、これをリメイクして西部劇を作ることを考えました。
それが「荒野の用心棒」でこの作品は瞬く間に注目され、世界的にも有名になります。
当然そうなると東宝の関係者も黙っておられず、これは盗作だ!という訴えを起こしたわけですね。
その結果盗作であることは明白となりましたが、「荒野の用心棒」がとても面白い、ある意味元である「用心棒」よりも面白いと評する人も多いのです。

かくいう私も「荒野の用心棒」ファンですから、面白いということはわかっています。
でも考えてみればこれまで黒澤明監督の「用心棒」は初めからちゃんと見たことはなかったなあ、と思っていたのです。
どこかのワンシーンとかは見たことがありますが、全体を通して見たことがない。
それなら一度見てみようと思ったのでした。



映画の概要

監督 黒澤明

脚本 黒澤明菊島隆三

製作国 日本

製作年 1961年

製作費 9087万円

興行収入 3億5100万円

上映時間 110分

登場人物

桑畑三十郎 三船敏郎

居酒屋権爺 東野英治郎

清兵衛 河津清三郎

清兵衛の妻おりん 山田五十鈴

清兵衛の息子与一郎 太刀川寛 

新田の丑寅 山茶花究

新田の亥之吉 加東大介

新田の卯之助 仲代達矢

造酒屋徳右衛門 志村喬

百姓の妻ぬい 司葉子

丑寅の用心棒かんぬき 羅生門綱五郎

 

 

あらすじ

浪人がふらりと寂れた宿場町に立ち寄ります。
そこでは賭場の元締である清兵衛一家とそれに対抗する新田の丑寅一味との対立が続いており、ヤクザものをそれぞれ多く抱えて血なまぐさい争いを起こしていました。
お金もない浪人が立ち寄った居酒屋では無愛想な権爺がこの町の荒廃ぶりを嘆き、飯を食ったらさっさと立ち去れと告げます。
浪人は腕に覚えがあり、彼らを壊滅させてやるつもりだというのです。
もちろん一人で全部を相手にするわけではなく、酒を飲みながら考えようではないかといいます。

浪人は自分の腕前を披露します。
3人の無法者共たちが凄んできますが、全く動じず、あっという間に切り従えてしまいます。

清兵衛は彼の腕を見てすぐに抱えようとします。
名を聞かれた際には表の桑畑を見てとっさに桑畑三十郎といいます。
そしてもうすぐ四十郎になるとも。
なんとか陣営に引き入れたい清兵衛は、前金として25両。
丑寅との抗争の決着がついたら残りの25両の50両という金額でした。
その大金をくれてやるのが惜しいと考えたのが清兵衛の妻おりん。
彼女は女郎屋も経営しており、夫の清兵衛よりも着物座った女性でした。
その内容を盗み聞きした浪人は、丑寅一味との抗争を前にして、前金を叩き返して、高みの見物をきめこみました。

そして八州廻りという役人がやってくることになり、お互いの抗争は一時休戦となります。
隣村で役人が殺されたことを聞きつけ、八州廻りはこの町から離れます。
そして丑寅一味には切れ者の末弟卯之助が帰ってきます。
彼の懐には回転式銃がありました。
卯之助の働きにより両陣営は手打ちとなります。
2つの勢力を争わせて共倒れを狙った三十郎の計画は崩れます。
ところが居酒屋で愚痴をこぼすヤクザものの言葉を聞き、隣町での役人殺しは丑寅の差し金出会ったことがわかります。
三十郎はヤクザものを拉致し、清兵衛に売り渡すのでした。
清兵衛医の息子の与一郎は逆に丑寅に拉致され、それぞれ人質交換となりますが、卯之吉はその場で実行犯であるヤクザものを拳銃で射殺します。
それに対して清兵衛側は、丑寅の後ろ盾である造り酒屋の徳右衛門の情婦である百姓の妻ぬいを拉致して対抗します。
人質交換が終わりますが、罪のない百姓の妻ぬいとその家族、夫と幼い子供を見て、三十郎は考えます。
三十郎は丑寅の味方になり、油断させます。
そして頭の足りない丑寅の弟、亥之吉を騙して、匿われているぬいを助け出しました。
両陣営は互いに激しい抗争に発展します。
居酒屋の権爺は三十郎の人柄に大変喜びました。
そしてぬいたち夫婦からの感謝の手紙を渡します。
そこにやってきたのが丑寅の一味。
三十郎は連れ去られ、ぬいの居場所を吐かせるために拷問を受けます。
刀があれば無双の強さを発揮する三十郎ですが、巨漢のかんぬきには歯が立ちません。
彼は立てないほどの状態でしたが、僅かなスキを見つけて脱走します。
彼は体の回復をまちながらも、包丁を投げる訓練をします。
丑寅一味は三十郎を匿っているのが清兵衛たちだと考え、彼らの家に火をつけ、ついには清兵衛、妻のおりん、息子の与一郎ともども惨殺してしまいます。
この町は丑寅の町となってしまい、ついに居酒屋の権爺が捕まってしまいます。
三十郎は包丁と棺桶屋からもらった刀をもって丑寅一味と対決することになります。

感想

「荒野の用心棒」はこのオリジナルの「用心棒」の盗作というか、まるっきりコピーと言って良い作品です。

最初から通してみるのははじめてですが、見ごたえがありました。
モノクロですが、映像はきれいというか、雰囲気があります。
からっ風を表現しているのか、常に風が舞っています。
居酒屋の窓から見る外のならず者たちの狼藉ぶりなどのシーンも細かく計算されて見せているんですね。
セリフは不要。
映像を見ればわかる。
これぞ映画の表現なのでしょう。

からっ風と言えば上州。
そしてカカア天下ですよね。
清兵衛の妻のおりんは強烈なカカア天下でしたね。
後に仕事人シリーズで三味線おりくですが、気の強い女性は当時からハマっていたのでしょうね。

悪そうな面構えのおりんを演じる山田五十鈴さん

後の名優たちがこの映画では端役で出演しています。

丑寅に雇われていたヤクザの熊には西村晃さん。
水戸黄門東野英治郎さんが私の中で存在感が大きいのですが、西村晃さんも演じていますよね。
この映画には二人の黄門様がいるんですよね。

浪人の三船敏郎さんと居酒屋権爺の東野英治郎さん


熊の相棒で口が軽くて切られてしまう瘤八役には加藤武さん。
金田一シリーズでは「よしわかった!」というセリフでいつも犯人を勘違いしていましたよね。

丑寅の弟(加東大介さん)を挟んで西村晃さんと加藤武さん


清兵衛の子分のヤクザものが天本英世さん。
仮面ライダー死神博士ですよね。

序盤のシーンでヤクザものとして片腕を切り落とされる役のジェリー藤尾さん。
他にも夏木陽介さんも出演していましたね。

ものすごく印象に残ったのが巨漢のかんぬきという丑寅の子分。
刀ではなく木槌を振り回すというパワーファイターです。
もっとも三十郎をぶっ飛ばしたりするのは素手での闘い。
演じていた羅生門綱五郎さんは、元力士、そしてその後はプロレスラーらしく、映像を見ていても同じ人間とは思えないほど大きな体です。
そして独特の風貌。
彼のタイプなら誰もが思うのが、「フランケンシュタイン」の役なのですが、やはり演じていたみたいです。
テレビドラマの鉄腕アトムフランケンシュタイン役を演じていたたそうです。
もうそのまんまです。
フランケンシュタインにしか見えません。


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