いわゆる密室殺人というものである。
森博嗣のデビュー作である「すべてはがになる」の犀川創平と西之園萌絵のコンビが登場する推理小説。本格ミステリと言われるジャンルになるのだろうか。
今回も相当に手強い密室殺人で、手がかりの糸口さえつかめない状況。しかし好奇心の塊である西之園萌絵と犀川の旧友である喜多助教授の活躍もあり、一気に真相へ踏み込んでいく。
内容は面白いが、前作と比べると相当スケールダウンしている感じがする。デビュー作はトリックというよりもまさか?と思えるような「解」が用意されていた。
今回もきちんと「解」が用意されていてそれなりに納得はできる話にはなっている。
しかし、高校時代からの友人の喜多助教授も西之園萌絵も飾り物でしかなく、結局は犀川が最期に謎をすべて説明するというパターン。
これだけ大きな事件でありながら、警察の操作で関係者の背後が洗い出せなかったことも疑問。これだけの大きなトリックを仕組んだ犯人は相当に知能的だが、動機が不明。それらを知ることができなかった犀川たちがその動機にピンポイントで当てるというのも出来すぎ。トリックに関する謎解きなら犀川一味が明かすというのはわかるが、本来なら動機に関することなら膨大な人員を動員して調査にあたった警察が一番最初に知りうることである。
不満もいくつかあるが、まずまず。
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1996/07/01
- メディア: 新書
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