奉公に出された貧しい家の三男坊の永吉。京都の豆腐屋「平野屋」で修行を積み、見込まれるが暖簾分けには時間がかかる。そして江戸の隆盛を聞いて掛け合ったところ、江戸での豆腐作りに励む。まだ若い永吉が見ず知らずの土地に行き、「京や」という豆腐屋を始める。そこで知り合った長屋のおふみと夫婦になり、二人して店をもり立てる。最初は江戸の豆腐と違い、売れずに苦労するが、長屋の娘、おふみに助けられつつも、くじけず頑張り抜く。永吉の作る豆腐は徐々に認められ店は繁盛する。子供たちにも恵まれる夫婦であったが、ちょっとした行き違いで家族、兄弟が不和になる。そこには大きな仕掛けもトリックもない普通の小説だが、人としての生き様、人情話が散りばめられており、思わず涙ぐむようなシーンもある。
主人公たちの永吉の家族はもちろんだが、それを取り囲む脇役たちがまた渋い。今は失われた日本の庶民の貧しいながらも助けあう姿が描かれている。
時代は江戸時代。しかしながら普通の時代小説とは違って、本当の庶民たちの生活を描いており、ほのぼのとしたところもある。読みやすい本なので、すんなりと読み終えてしまった。深い感動とまでは行かないけれど、清々しい気持ちになれる小説。どんなに苦労をしても一人の力ではなく、それにはいろんな人達が関わっているということを改めて感じさせてくれる。
- 作者: 山本一力
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/09/01
- メディア: 文庫
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