悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

夜明けのすべて 

瀬尾まいこさんの「夜明けのすべて」を読みました。
大変読みやすい文章で、スラスラと読めます。
まとまった時間が撮れずに一気に読むということはできませんでしたが、気づけば読み終わっていました。

この本は私が購入したものではなく、妻が購入したもの。
まだ文庫化されておらず、書店でもほぼ見当たらないことから、ネットではプレミア価格となっています。
妻はどうやって手に入れたのか走らないのですが、「読んでもいいけど、すぐに読み終えて~」とのこと。
どうやらすぐにでもメルカリなんかに出したいのかもしれません。
妻がかった理由は大体想像がつきます。
映画化されることが決定し、その主演に上白石萌音さんが抜擢。

https://yoakenosubete-movie.asmik-ace.co.jp/


妻は上白石萌音さんの大ファンで、先日はコンサートにも行ってきて、とても良かったとのこと。
そして上白石萌音さんは、この作者の瀬尾まいこさんの大ファンであることを公言しており、「そして、バトンは渡された」の文庫化にともない、解説を書いています。
女優、歌手以外にも多彩な彼女は超売れっ子ですよね。
(長い前置き、スンマセン)

 

登場人物

藤沢美紗
栗田金属に勤める28歳。
PMS月経前症候群)に悩むOLです。
人一倍気配りのできる素敵な女性なのですが、生理の前になる突然やってきて、衝動を抑えることができません。

山添孝俊
栗田金属に努めだしたばかりの25歳。
パニック障害のため、前職を辞め、「楽」に勤められる栗田金属に就職しました。


栗田社長
栗田金属の社長で、「無理なく、けがなく、安全に~」が社長の毎朝の挨拶で、この会社のモットーです。

住川さん
栗田金属の年配の女性事務員。
空気を読みながら、若い藤沢さんともうまくやっています。

 

平西さん
栗田金属きってのベテラン社員で、顧客の誕生日まで知っている人です。


鈴木さん
職人肌のベテラン社員で栗田金属の商品なら釘の一本からでもいくらでも語ることができ料な人物です。


辻本
山添君が以前働いていたコンサルタント会社の上司です。

あらすじ

明るく、会社の人たちに心配りのできる若いOLの藤沢美紗は元は別の会社に勤めていました。
しかし彼女は生理の前になると突如として自分が制御できなくなる病気、PMS月経前症候群)でした。
それが原因で会社を辞め、今の職場に3年前に入ってきたのです。
今勤める会社は栗田金属というとても小さな会社です。
ノルマもなければ、残業もない。
代わりに給料も安いという会社ですが、PMSである自分をしっかりと受け止めてくれる働きやすい会社。
1ヶ月前に入ってきた25歳の山添孝俊はいつも遅刻気味ですし、愛想の欠片もありません。
仕事は真面目なようですが、覇気がなく、会社には一番遅く出社し、一番早くに退社するのです。
ある日、藤沢美紗はコンビニに行ったついでに、みんなのために甘いものを買って帰り、配っていきます。
ところが山添は受け取るのを拒否します。
そんなタイミングで藤沢のアレが始まってしまったようなのです。
山添がいつも口にするのは炭酸水。
その炭酸水の蓋の開け締めにとてもイラつき、藤沢は山添に文句を言い始めます。
そうなるともう止まらない。
彼女は心のなかで自制しようとするものの、止めることはできません。

山添孝俊は元は優秀なコンサルティング会社に就職していました。
そこの上司は大変素晴らしい人でしたし、尊敬もしていました。
また私生活では仲間も多く、素敵な彼女もいたのです。
みんなと仲良くやっていたのですが、突如として彼はパニック障害という病気になってしまいます。
彼女も上司も彼には優しく接してくれるものの、追い込まれていくのです。
結局自分で、会社を辞め、彼女とも別れ、仲間ともほぼ音信不通となります。
心配をかけまいと両親にも打ち明けられず悶々と過ごす毎日。
そんな状況でも生きていくために仕事を探し、栗田金属という会社にめぐり逢います。
彼はある日発作に襲われますが、カバンに入れてあったはずの薬がありません。
トイレ掃除をしていた藤沢さんが、すぐにかけより、落ちていた薬を彼のものだとすぐに察知して手渡すのでした。

藤沢美紗はPMSの時期をすぎると至って普通で、むしろ人に気を使いすぎるくらいの人柄です。
パニック障害のことは誰にも打ち明けていないのに、彼女は山添孝俊がパニック障害であるというのです。
彼女もPMSで辛く、同じ薬を飲んだことがあったというのです。
なんとか山添のためにしてあげられることはないかと考えて、彼女は山添の家に押しかけて髪の毛を切ることにします。
しかし人の髪の毛なんかを切ったこともなく、手先も決して器用ではない彼女は、ものの見事に無様な格好にしてしまいます。
自分の刈られたあまりにも無様なアタマを見て、山添は2年ぶりに笑うことができたのでした。


感想

素敵なお話ですね。
来年公開予定の映画化も楽しみです。
劇場に足を運ぶかどうかはわかりませんが、上白石萌音さんのファンの妻は見に行きたいと言うかもしれません。
PMSと言うのは男性である私にはわかりませんが、女性の方は共感するところは多いのかと思います。
妙にイライラすると言うのは「ある」と多くの女性からも聞いています。
もちろん一番そばにいると妻からも。
ただ、この物語の主人公の一人である藤沢美紗の苛立ち方はその限度を超えています。
彼女もアタマの中ではわかりながらも、もう止まらないんですね。
だから病気なのでしょう、これは。
本当に辛いと思います。
もう一人の主人公である山添孝俊はパニック障害
これも実感できませんが、職場にパニック障害で退職した人がいました。
薬は飲んでいたようで、普段に仕事ぶりは全く問題ないというか、素晴らしい人柄の方だったのです。
ところが家を出られなくなり、会社に出社することができなくなったのです。
どうして?なぜ?としか思えないのですが、この物語を読んでいると、もうなんというか電車に乗ったりすること自体が無理なんでしょうね。

 

この物語の大半は、彼女と彼の苦しい姿があるのですが、概ねパニック障害に怯えている彼を、なんとかしてあげようという気持ちの彼女の行動があります。
ただ、彼には不思議と彼女のPMSの前兆が読めるのでした。
お互いに、好きでもタイプでもなんでもない者同士なのですが、不思議と相手の体調に関してはお互いにとても心配し合うようになるのですね。
そしてそうすることによって、前が全く見えなかった二人なのですが、「夜明け」が見えてくるようになるのです。
つまりこの物語はラブ・ストーリーでもあります。
素敵なラブ・ストーリーと言うのはいろいろな形で生まれてくるものです。
妻は結末がなく尻切れトンボと評するように、ラブ・ストーリーの結末は書かれていませんが、これはこれで素敵なエンディングです。
なんというか力強く立ち上がろうとする若い二人を応援する気持ちでいっぱいになりました。

この物語に登場する人たちは誰一人として悪い人はおらず、みんな素敵な人たちですね。

「そして、バトンは渡された」は、本も読みましたし、映画も見ました。
どちらもとても素敵でした。
あの物語に出る登場人物もみんな素晴らしい人達です。
なんだかいい人が出てくる話を読むとほっこりしますよね。

 

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