悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

新宿鮫 大沢在昌

年末調整の時期になってきました。
ちょっと早いと思うのですが、会社はいついつまでに、これこれをしておいてくださいとのこと。
数年前からWeb年調なるもので、会社は手続きをするようになりました。
会社ではなく委託したところがやるのでしょう。
ところが、Web年調と言いながらも、結局は手書きの書類も提出しなければならず、これまで以上に手間がかかるようになりました。
人事部の手間が省けただけで、従業員の手間は増えているわけですね。
何だかしっくりした気持ちになれませんが、組織の中の人間の一人ですから従う他ありません。



大沢在昌さんの代表的な作品の一つである「新宿鮫」という小説を読み直しました。
以前読んだのですが、なんとなくしか覚えていませんでした。

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読み直した理由は、この小説の続編である「新宿鮫2毒猿」「新宿鮫3 屍蘭」を読むためでした。

 

登場人物

鮫島 
この本の主人公。
警部ですが、下の名前は不明(描かれていません)
通称「新宿鮫
一度食いついたらはなさないという意味も含まれています。
元国家公務員採用1種試験に合格したエリート、つまりキャリア警察官。
しかし、今は所轄、警視庁新宿署防犯課の警察官。
彼が飛ばされた原因は、過去にあった傷害事件(被害者)。
そして公安部内にある公にできない抗争の秘部に触れ、それらの真相にかかわる同僚の遺書を持っているため、キャリアでも彼を危険物のように扱っています。
所轄でもはれものに触るが如く、どこにも彼に居場所はなかったのですが、防犯家の桃井は彼を部下として迎えます。

 

(しょう)
ロックバンド、フーズハニィのボーカル。
出会ったとき、彼女は22歳。
性格的に女っぽさはなく、ロッカーであり、見た目も大人しくは見えないが、曲がったことが嫌いな真っ直ぐな性格をしたな女性です。
一回り以上離れた歳の差を気にすることもなく、鮫島と恋人関係。

桃井
鮫島の直属の上司。
新宿署防犯課の課長です。
元はとても優秀な警官でしたが、過去に交通事故で子供を失い、離婚。
今では、警察官としての情熱もなくしてしまったのか、マンジュウ(死体)と呼ばれています。
どこも引き受けなかった鮫島を受け入れます。
窓際族のように何に対しても無関心なようですが、正義に対する思いは変わらないようです。

 


新宿署の鑑識課。
かなり変わった人間ですが、鑑識としての能力、特に弾道検査や銃槍についての鑑識眼は一流の人間です。
仲間のいない鮫島にとっては数少ない相談相手の一人です。

 

香田
鮫島と同期のキャリア組、警察官僚。
元ライバルである鮫島をエリートから落ちこぼれた人間として見下しています。

 

木津
左肩に入れ墨をしている男。
二枚目で女性に不自由はなさそうだが、女性に興味はない人物。
銃の改造の腕が一流の職人です。
もちろん違法な仕事であり、顧客はヤクザなどです。

あらすじ

鮫島は国家公務員採用1種試験に合格したキャリア警察官でした。
しかし、あることをきっかけに出世街道からは外れ、身分は警部ながらも役職は持たない新宿署の一警察官にくすぶっているのです。
元キャリアであること、火種になることを警戒するためもあり、どの部署も鮫島を受け入れるところはありませんでした。
そんな中、防犯課の桃井は鮫島を受け入れたのでした。
通常、警察官、刑事というものは操作をするにあたって、コンビを組むものなのですが、どこにも居場所のない鮫島は署内でも一人であり、捜査も一人で行う文字通りの「一匹狼」なのです。

歌舞伎町を中心に警察官の連続殺人事件がありました。
新宿署内の鑑識課には薮という一流の鑑識官がいます。
かなりの変わり者でしたが、そのおかげで鮫島とは普通に話ができる人物。
数少ない「仲間」です。
そして薮の協力により、犯人は改造銃を使っての犯行であることがわかります。
鮫島はかつて逮捕した銃の密造、改造職人である木津というものがいました。
刑務所を出所してからも独自に彼を負い続けていましたが、なかなかしっぽを見せません。
今回の警察官連続殺人においても、鮫島は木島の作った改造銃による犯行であると推測しています。

 

感想

大沢在昌さんの代表作でもある「新宿鮫」シリーズの第1巻ですね。
新宿鮫という言葉がいかにも格好良く、ぴったりに感じです。
主人公の名前が鮫島というのはともかく、犯人、悪を噛む「鮫」そのものです。
推理小説というよりは、ハードボイルド小説ですが、いわゆる刑事ドラマに出てくる暴力警官ではなく、なんとキャリア組の超エリートなんですね。
しかし彼はキャリアによって出世、上を目指すために警察官になったのではなく、ただ正義を求め、悪を憎む、警察官の本来の姿を目指しているのです。
しかし、その警察の組織も巨大であるがゆえに闇も深く、現場での不正もあれば、上層部の体質もあり、それらのしがらみなどによって彼は冷遇され続けます。
一匹狼での捜査で、この小説でも命を奪われる寸前まで追い込まれてしまいます。
体も鍛えているので、暴力沙汰に立ち向かえないという人物ではありませんが、圧倒的な強さを持っているわけでもないところが、帰って現実味を与え、凄みを与えている気がします。
14歳も歳下の恋人、晶はロックバンドのボーカルで、かなりの跳ねっ返りですが、二人の関係もシリーズを通して描かれていくのでしょう。

冒頭のシーンからして、少し変わっています。
刑事ドラマの場合、冒頭のシーンは人間関係の闇を描いていたり、犯行シーンだったりします。
なんとサウナで、男色のある別の警察官に鮫島が凄んで見せるシーンなんですね。
新宿、歌舞伎町、ホモ、ゲイバー、ヤクザ、改造銃。
終盤にかけてはスピード感がアップし、展開も盛り上がってきますね。


 

 

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