伊坂幸太郎さんの本を先日読んだ影響で、こちらを再度読んで見ることになりました。
3人の殺し屋が出てくる物語で、軽いタッチで行われるのですが、結構残忍なシーンもあります。
2010年に読んでいました。
なので12年前。
かなり忘れていて当然かも知れません。
ちなみにこの本を読んだ後、映画があることを知り、映画も見てみました。
原作(本)とは若干違いますが、雰囲気は出ていますし、エンディングも違いはあれど、アレはアレで良かったと思っています。
登場人物
鈴木
この物語の一応は主人公。
元高校教師。
鈴木の妻。
すでに事故でこの世にいない存在。
ホテルのレストランでバイキング料理を真面目に戦っているところで鈴木と知り合う。
ポジティブな女性。
比与子
フロイラインという会社の幹部女性。
色白で一重まぶた。
寺原
フロイラインをはじめ、非合法な仕事を行っている裏稼業の大物。
色んなところとつながっており、法に触れることをしても罪に問われない存在。
鯨
殺し屋1。
190センチ95キロの巨漢。
しかも人を自殺に追い込むという特殊能力を持つ。
罪と罰の本が唯一読む本。
蝉
殺し屋2。
かなり若く痩身。
ナイフを使う。
若造で強そうには見えないが、しなやかで素早い動きを身上とし、腕は確か。
名前の通りうるさい。
槿(あさがお)
殺し屋3。
ターゲットを押して車に轢かせて殺すという人物。
押し屋と呼ばれ、謎に包まれている。
岩西
蝉に仕事をやらせている。
蝉と岩西は常にニコイチで、仕事を持ってきて指示をするのが岩西。
そして実際に行動するのは蝉の役割。
あらすじ
鈴木は高校の教師でしたが、愛する妻を失い、その原因となる人物、寺原の息子に近づくために、寺原の非合法な会社フロイラインに入ります。
新人教育を兼ね、鈴木を見定めるために幹部社員の比与子は鈴木に悪事の実行を命じます。
若い男女を眠らせ、体を拘束して監禁します。
善良な鈴木が悪に手を染める事ができるかどうかを見定めているようです。
そんな中、妻が死んだ原因の人物、つまり鈴木にとっては復讐のターゲットである寺原の息子が眼の前で交通事故にあいます。
状況的に即死。
生きている可能性はありません。
殺したのは「押し屋」と呼ばれる殺し屋で、比与子の命令で鈴木は押し屋の後を追いかけます。
鯨と呼ばれる巨漢の殺し屋は裏稼業ではかなり有名な存在です。
殺し屋としては完璧な仕事をこなします。
殺すのではなく、自殺をさせるのです。
鯨止めを合わせた人間は生きる力を失い、自殺へと向かうのでした。
今日もまた一人大物政治家の秘書ヲ自殺に追い込む仕事を請け負い、確実に仕事を終えます。
その仕事を依頼した政治家は小心者で猜疑心の塊でした。
鯨を殺そうと別の殺し屋に鯨の殺害を依頼します。
殺し屋としては圧倒的な存在である鯨ですが、彼の周りには殺した人物がつきまといます。
彼の心は蝕まれているのです。
蝉はナイフを使った殺しをします。
一家全員皆殺しなど他の殺し屋がやりたくないような仕事でもやり抜くのです。
もっともこれらの仕事をもってくるのは相棒の岩西です。
岩西と蝉の二人しかいない組織であり、殺し屋としては名を挙げていくためにも何でもこなしていく必要があったのです。
蝉はホームレスに火をつけた息子を持つ一家を全員切り刻んで殺害します。
休みまもなく岩西から次の殺しの依頼を受けるのですが、彼はいつも不満でした。
岩西は仕事をとってくるだけで、実行するのは常に自分。
岩西がいなくても自分一人でやっていけると思っているのです。
鈴木は比与子の命令とは言え、押し屋かどうかをきちんと確認する必要がありました。
寺西は自分の息子が殺されたことに怒りを爆発させ、すぐに押し屋を探し出して抹殺するというのでした。
押し屋で寺原の息子を殺したのであれば、自分の復讐の相手を奪われたことになります。
その一方で殺してくれた感謝すべき相手なのかもしれません。
鈴木は押し屋の家を突き止め、家庭教師の営業としてその家に入り、押し屋と思われる男に話しかけます。
男は槿(あさがお)と名乗ります。
彼には女子大生にしか見えない若い妻と二人の男の子がいました。
亡霊につきまとわれる鯨。
鯨に前日、殺しを依頼した政治家は鯨に面会を申し出ます。
その理由は彼をおびき寄せ、新たに依頼した殺し屋に彼を殺してもらうためでした。
依頼した殺し屋のエージェントは岩西。
つまりは蝉が鯨を殺す事になっていました。
蝉は遅刻し、現場に到着したときには、鯨の姿はなく、依頼者である政治家の首吊りしたいがそこにありました。
3人の殺し屋はどうなるのか。
またフロイラインという違法な会社の親玉である寺西は?
感想
妻の命を奪われた復習のために教師をやめて怪しい会社に入った鈴木。
その鈴木を中心として3人の凄腕の殺し屋が交差する群像劇です。
3人の視点から描かれるため、時系列がややこしくなりますが、ほぼ同時進行しているのです。
バラバラに語られながらも一つに収束していくという伊坂幸太郎さんお得意の小説ですね。
色んな話が最終的に伏線回収しながらも一つの線となっていきます。
小説を読んでから映画を見ましたので、映画もわかりやすかったです。
ただ、映画と小説では少し違いもあります。
たとえば、この物語の冒頭に主人公鈴木に拉致されるカップルですが、映画では一人です。
そして本当に終盤に彼らは脇役から一躍表に飛び出してこの物語を締めくくる存在となります。
映画では、鈴木を演じるのが生田斗真さん。
似合っています。
そしてその妻には波瑠さんが演じています。
悪人寺原は石橋蓮司さんが、やはりいい味を出しています。
そして鯨には浅野忠信さんが演じています。
体格的にこれはちょっと違うだろう?と思っていましたが、流石に雰囲気のある俳優さんで、なじんできます。
目の奥にあるくらい底なし沼のような空洞が彼が演じることで本当にひそんでいるような気になります。
存在感のある俳優さんですよね。
ナイフキッズの蝉を演じたのがアイドル山田涼介さん。
ナヨナヨしたイメージはなく、軽いものの、冷徹な雰囲気をまとっていつつ、しじみの呼吸が見て癒されるというキャラを良く出していると思います。
残念だったのが「押し屋」の吉岡秀隆さん。
原作では鈴木との絡みがあって、もっと存在感があるのですが、なんとなく出番が少なくて残念な感じでした。
どの殺し屋の役も伊坂幸太郎ワールドが頭の中にある読者に対して満足する像を演じることは難しいでしょう。
その中でもはっきりしている蝉はまだしも、押し屋のキャラクターは原作を読んだ読者でも今ひとつ掴みきれないところがあるため、難しいのかな?とも思ってしまいます。
映画では妻とのシーンがふんだんにあります。
原作では、出会いのときのバイキングでの食事などはあるものの、あの世から語りかけられるような言葉としての内容が多かったです。
映画ではなくなったシーンも映像化しています。
でも原作にないこのエンディングのための仕掛であったと最後に納得できました。
原作はもちろん良かったのですが、映画はまた別の楽しみ方があるということですね。
ちなみにこのグラスホッパーの続編がマリアビートルで、マリアビートルを原作としている映画が今上映中の「ブレット・トレイン」ブラット・ピット主演の作品ですね。