悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

幻覚少女 根本聡一郎

脱水少女と同じようなラノベ風の小説と思っていました。
軽いタッチで読みやすいのですが、しっかりと最後はホロリとさせてもらいました。
素敵なファンタジー小説です。

 

この本の目次

  1. 自殺の名所
  2. シェアハウス
  3. 調査
  4. 極道マンション
  5. 潜入
  6. ポルターガイスト
  7. 九頭岡霊園
  8. リハーサル
  9. 疑惑
  10. 「あの世」
  11. 雨と銃声
  12. 少女
  13. 朱美
  14. 弥生
  15. 出発
  16. 残された人々
  17. 電話

あらすじ

菅原創(つくる)は大学生。
とある自殺の名所と呼ばれるところで遭遇した不思議な女性。
彼女には足がなく、幽霊?と思いながら、その場を離れようとするが、ずっとついてきます。
彼女の名前は弥生。
たしかに彼女は幽霊でした。
幽霊の弥生はこの世には命のない存在です。
そして命のある創に、やってほしいことがあると依頼をしてきます。
それは大臣である久我浅緋(あさひ)の殺害でした。
そんな事できるわけがないという創でしたが、弥生は真剣です。
彼女がなくなった原因が久我浅緋にあるというのでした。
創の下宿にはもうひとりの幽霊朱美が登場します。
実は以前から、創の家が気に入っていたとのこと。
創と幽霊たちの物語は果たしてどうなるのか。

 

感想

幽霊である弥生や朱美との軽妙な会話が面白いファンタージー小説です。
死んでしまって肉体はなくなっても成仏せず、この世に念として存在する幽霊。
彼女たちにはそれぞれ幽霊としてこの世に存在する理由があるのです。
最初に遭遇した幽霊の弥生は自分の命を奪った久我浅緋(くがあさひ)という政治家への復讐が目的でした。
若くして死んでしまった彼女の想いを叶えるため、主人公の創は行動するのですが、なぜ急に創の前に幽霊たちが現れるようになったのか?という点が疑問でした。
しかしラストになって、出会ったときの創の状況がわかり「なるほど」と思うと同時にうまい設定だなあ、と感心しました。
ちゃんと「冒頭」にも書かれていますが、うまくハメられました。
ここに登場する人物はみんな普通の、むしろ善人ばかりです。
主人公の創ももちろんとても良い人なのですが、幽霊の弥生さんも朱美さんも、大臣の久我浅緋さんも全て素晴らしい人たちなのです。
弥生さんはこの小説にあっては、ストーリーを進める上で重要なキャラクター。
大人しく自主性がない、頼りない主人公をグイグイ、強引に動かしていきます。
ファンタジー小説なので、不思議なことがあっても一向に良いのですが、幽霊の出てくる小説にしてはとても軽い表現が多く、本当にラノベ風といえばラノベ風です。
ラノベというのがどういうものを指すのかという定義も必要ですが)
部屋に住み着いていた朱美さんもかなり変わった人ですが、死んだ時期はふたりともかなり以前。
幽霊のお二人は世代は創と同じくらいですが、今の時代からはちょっとずれていると言うのがまた面白いところです。
弥生と朱美は幽霊同士ですが、仲の良い友達同士。
最後の方になって明かされる真実がホロリとさせます。
そしてさらにエンディング間際になって、すべての真実が明らかになったとき、創は命の重みや生きることの意味を深く知るのですね。
いい話で終わりますね。

幽霊の話、ファンタジーですが、とても読みやすいです。

幽霊の話ですが、全然怖くないので、ホラーを求めている方はおすすめしませんが、若い男女にありがちな恋愛ものでもないです。
大変良いストーリーでスルスル読めるので、機になった方はぜひ一読を~

 




 

根本聡一郎さんの小説は、どの作品も雰囲気が違いますが、面白かったです。
あえて言うなら脱水少女はカバー絵のデザイナーが同じで、イメージ的には近いです。
脱水少女はタイムトラベルもあるSF。
幻覚少女は幽霊のファンタジーと言う違いはありますが、若い男女の物語という点でラノベ風ですね。

 

 

 

 

 

 

 

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