悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

東京タワーが消えるまで 森沢明夫

森沢明夫さんの小説です。
通勤中、お昼休憩などで読みました。

ほっこりする話が多い森沢さんの小説ですが、この小説も読んでいてい心地よいです。
主人公の「すみれ」さんがパワフルに働く姿が美しいですね。

登場人物

佐倉すみれ
レコード会社のOLから自分で会社を立ち上げた女社長。
とは言え、社員もおらず、営業、総務、所属アーティストのフォロー、雑用も含めて全てをこなす。
常に全力の彼女はいつも疲れ果てており、愛する彼氏とのデートにも支障が…

 

DEEPSEA
すみれが発掘した才能あるバンド。
そして彼らが売れるために地道な努力を積み重ねるが…。

 


すみれが愛する彼氏。
しかしいつも彼よりも仕事を優先するすみれ。
すみれのことは大切に思っているが、すみれは仕事のことばかりを考えていて、自分の言葉をあまり聞いていないみたい。

 

トシちゃん
敏腕音楽エディター。
レコーディングでは常に最高のものを作ってくれる心優しい男性。
そしておしゃれで女性からもたいへんモテる人物。
すみれは、彼氏である亮よりもずっといる時間が長いため、関係を疑われないように気をつけているようだ。

 

凛子
すみれの親友で漫画家。
そして占いのサイトも営んでおり、毎朝彼女のページを見るのがすみれの日課
直接すみれを占ってくれることもあり。
彼女の占いは本当によく当たる。

美咲
すみれの親友で同じ会社の元同僚。
大変な美人で親分肌。
関西弁でいつもすみれを励ましてくれる心強い姉御。

 

ハルト
元メジャーのアーティストだが、メジャー落ちしたことで妻に逃げられる。
一人娘のミッチーを何よりも大切にしている心優しいパパの一面も。
すみれの噂を聞きつけ、彼女の会社のアーティストとなります。

 

ミッチー
ハルトの娘。
無邪気でとても可愛らしい子供。
トシちゃんとも大変仲がよく、ハルトもトシちゃんを信頼しています。

 

父(哲司)
すみれの父親で醤油づくりの職人。
笑顔が苦手で、すみれとは長い間会話もない関係だが、最近携帯のメールを覚えたようで、意味不明なポエムのようなメールを送ってくる。

 

あらすじ

仕事に生きる女性のすみれ。
レコード会社を自ら独立して作ってしまいました。
その理由は日の当たらない優れたアーティストを売れるようにするためでした。
彼女が力を注いでいるのはDEEPSEAというバンド。
すみれにとって心の拠り所でもあるのは彼氏の亮。
しかし、仕事を優先するすみれは亮とはすれ違う生活。

亮から連絡が途絶え、自分が育てたDEEPSEAとは忙しさのあまり契約がおざなりになり、メジャーに引き抜かれます。
すみれにとっては泣き面に蜂。
流石に笑顔が売り物の彼女も凹んでしまい、頼れるのは親友たち。
すみれは田舎の静岡へ一旦帰省します。
長らく冷戦状態だった父とは和解し、母からすみれの名前についてのことを聞きます。

捨てる神あれば拾う神あり。
元メジャーのアーティストであるハルトから、すみれに対してアプローチがありました。
ハルトの才能は高く買っているすみれは、大喜び。
そしてハルトを再度売れるアーティストとするための活動を開始します。
果たして、ハルトはメジャーに返り咲くことができるのか?



感想

そんなに働かなくてもいいだろう?というくらい仕事大好き人間の「すみれ」さん。
すみれという名前は花の名前からではなく、Smileからとってつけたのです。
そしてスマイルは自分が生きやすいための武器ではなく、他人に向けられたもの。
つまりは他人に喜んでもらうためにスマイルはあり、それによって他人が笑顔になれば、回り回って自分に帰ってくるという意味でつけられたんですね。
そこまで笑顔にこだわったのが父親の哲司。
職人気質です。
笑顔がうまくできない人間で、娘には素敵な笑顔で他人を喜ばせるような人間に育ってほしいという気持ちで付けた名前。
娘との会話も不器用なのですが、もう、心の底から娘を信頼し、いつでも支えてあげようという気持ちで見守っています。
私は、この哲司さんほど無骨で職人気質でもないですが、結婚した娘を持つ身として、とても共感しました。
心配でたまらない気持ちと同じくらいある娘に対する信頼。
いいお父さんですね。

物語の終盤にかけて、森沢さんの小説にはもう一つのし掛けがありました。
素敵なエンディングになります。
感動ですね。

 

ぜひ手にとって読んでほしいですね。

 

 
どの作品もほっこりといい気持にさせてくれる小説ですね。

 


 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

Copyright ©悪魔の尻尾 All rights reserved.