悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

悪夢の設計者 森村誠一

Kindle積読になっていたものを探し出して、通勤で読んでいました。

小説ならではの設定で、2時間ものサスペンスなんかにぴったりなストーリーかもしれません。
(別に映画でもいいですが、お金を払ってまで見ようと思うような映画が作れないと思いますので)

 

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登場人物

水木時彦(みなきときひこ)
主人公。元チンピラが伊豆の温泉旅館で寄生。
ある日、彼のもとへたどり着いた男性はVサインをしたまま息を引き取ります。


多津子
財川家の御曹司財川一郎と結婚したばかりの新婦。
新婚旅行でやってきた温泉で夫は殺されたが、まだ入籍していないため、彼女は一芝居撃つことを計画します。

財川一郎(ざいかわいちろう)
財川家の御曹司。
多津子とは留学時代にアメリカで知り合うのですが、素性の知れない多津子との結婚は父に反対されます。
しかし脳溢血で

ボンボン育ちで何もできない人間だが、特に害もない人間。

しかし、何者かによって殺されてしまいます。

財川総一朗
財川を一代で巨大な企業にお仕上げた苦労人。
しかし、一人息子の一郎にとても甘い父親です。


財川聡次(そうじ)
総一朗の弟で、財川商事では副社長をつとめています。
猛烈な総一朗と違い、コツコツと補佐する人物で、財川の実質ナンバー2です。

谷口敏勝
財川の妹である恵子の夫。
財川商事の専務であり、財川観光の副社長。
数字に強く、経理に明るい有能な人物です。

お松
財川の家に長年住み込んでいる女中。
一郎が子供の頃から世話をしている。

神川美佐子
財川常務付の秘書。

柴崎
かつて水木をアニキとしていたチンピラ。
総会屋の代理として小銭を稼ぎにやってきたときに、財川一郎として振る舞う水木を見つけ、強請ろうとする。



 

あらすじ

水木(みなき)時彦は、横浜でチンピラをやっていた人間でしたが、流れ着いて、この温泉街に「寄生」しているような状況でした。
ある夜、異音に気づいた水木は瀕死の男性を発見します。
その男性は言葉を発することなくVサインをしたまま息を引き取ります。
水木は、この男性から金になる臭いを嗅ぎ取って、男性が宿泊している旅館へ行きます。
そこにはこの男性を待つ新婚の美しい女性、多津子が待っていました。

多津子は水木を夫だと間違えてしまうほど水木はよくにていました。
亡くなったことを告げると、多津子は水木を誘い、夫として演じるように言います。

亡くなったのは財川総一朗の息子である一郎で、多津子はようやく結婚することになった妻でした。
御曹司である一郎がアメリカに留学中に知り合った女性で、これまでは素性が定かでない多津子との結婚に父の総一朗は反対していたのです。
しかし総一朗も高齢で脳溢血で倒れてからは、気弱になったのか結婚を認めたのです。

多津子はなかなかしたたかな女性で、暗愚なボンボン一郎をたらしこみ、ようやく掴んだ玉の輿を手放すつもりはなかったのです。
結婚式は済ませたとはいえ、入籍していない彼女には財川の財産には絡んでいけないのです。

そこで風貌も声もそっくりな水木を夫の替え玉にしようというのでした。
チンピラであった水木は、最初金の匂いがして被害者の家族に近づいたものの、大事になりそうな気配に尻込みします。

しかし魅力的な多津子に抗えず、彼女の手ほどきを受けて財川一郎としての「教育」を受けるのです。

財川総一朗は圧倒的な力を持つワンマン経営者でしたが、脳溢血のあとはところどころおかしな行動を伴うこともあり、水木が一郎として演じていることも気が付かない様子でした。

 

財川一郎は、何者かによって殺されたはずなのに、生きている事自体が犯人にとっては、信じられないでしょう。

とはいえ、水木を偽物であると指摘することは、自ら一郎殺しに関わっていると白状するようなものです。

財川の莫大な財産を狙って、暗躍する人たち。

一郎殺しの真犯人は水木の正体に気づいているはずですが、水木たちは真犯人が誰であるか特定ができません。

そんな中、水木は器用に会社の重役として御曹司の一郎の振る舞いを続けます。

感想

どす黒い欲望が渦巻いた長編小説ですね。
現実離れした小説ならではの設定ですが、Vサインとともに冒頭の財川総一朗の言葉が、最後の最後に思い出されるのです。
カンのいい人ならそれまでに気づくのでしょう。

それなりに長い小説ですが、割とスラスラと読めてしまいました。
途中、これは官能小説なのか?と思えるような描写もありましたが、森村誠一さんの小説には、時折男女間の関係にどぎつい表現があったりします。
まあ、読者サービスと言ってしまえばそれまでですけどね。

こういったシーンをしっかり見せるのなら、TVではなく「Vシネマ」などになるのでしょう。
このご時世、テレビではなかなか難しいと思うのです。
私が子供の頃は、結構深夜にかけてのドラマではかなりどぎついシーンもあったと思うのですが、最近は本当になくなってしまいましたね。

 

 

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