悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

彼女と彼女の猫 新海誠(原作) 永川成基(著) 

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この作品について

もともとは、新海誠さんの原作で短編アニメ作品らしいですね。

彼女と彼女の猫」そのタイトルの通り、女性と猫の物語なのですが、一人の女声、一匹の猫の物語ではなく、いくつかの物語となっています。


原作は新海誠さん。
新海誠さんといえば、大ヒット映画「君の名は。」を作った方ですよね。
その後の「天気の子」なども含めて日本のアニメ界を代表する一人です。
息子いわく、彼の作画はもはや変態のレベルだそうで、細部へのこだわりというのはものすごいそうですよね。

 

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著者の永川成基さんのことはよく知らなかったのですが、ゲームのシナリオライターをされているようです。
アニメの脚本やゲーム作品の映像化、そして小説など様々なことを手掛けているマルチクリエイターなのでしょう。


お二方とも私より一世代若いわけですが、しっかりとした仕事をされるクリエイターですよね。

目次

第1話 ことばの海

第2話 はじまりの花

第3話 まどろみと空

第4話 せかいの体温

 

登場人物と猫

美優 主人公?

チョビ 美優の猫。主人公?

珠希 美優の親友

ノブ 美優のカレシ?

ジョン シロのことが大好きな老犬

シロ チョビの母親の白いきれいな猫

麗奈 絵の才能があるが、少しすねたところのある生意気そうな女子

雅人 麗奈と一緒に絵を学ぶ学生

ミミ 白くてか弱い子猫

カギシッポ 名もないボス猫でした

クロ かぎしっぽともうひとりのボス猫

 

あらすじ

美優はある雨の降る日に捨てられていた白い猫を拾います。
オスの白猫で、チョビと名付けました。
チョビは美優の飼い猫となったのです。
主人である美優のことが大好きなのです。

チョビは猫ですが、猫の社会にあまり溶け込めるタイプではありません。
それは主人である美優と同じ。
美優もまたコミュニケーションをとるのが苦手なのです。

美優にはノブというカレシがいます。
しかし、付き合っているのかそうではないのか、はっきりしません。
それを確認するための言葉を言い出せないのが美優なのです。

 

チョビの縄張りは、ジョンという老犬から与えられたものです。
哲学者のようなジョンは何でもよく知っており、チョビの母親である美しい白猫のシロを深く愛しているようでした。
シロは亡くなり、ジョンの言われるままに、シロの縄張りはそのままチョビが受け継ぐことになります。

そんなチョビにもガールフレンドができました。
ミミという白い子猫です。
ミミはチョビのことを気に入っているようですが、飼い主である美優が大好きなチョビにとって子猫は興味がありません。

 

ミミは飼い猫ではありません。
でも決まって餌を貰える場所を持っているのでした。
その飼主は変わり者でしたが、絵がとても上手な麗奈。
ある意味ミミと麗奈は似た者同士かもしれません。


麗奈は美術の専門学校に通っています。
そこで事務をしているのが美優でした。

美優はノブとの関係を確かめる前に、親友の珠希から「ノブのことが好きだった」と告げられました。
親友を失ったのです。
そしてノブは、相変わらず煮えきらない。
美優はカレシも失います。

 

美優は捨て猫を助けてあげたという気持ちから、自分が助けられていることに気づきます。

 

ミミは主に飼われているつもりはありません。
また麗奈も気まぐれで餌をくれたりくれなかったり、家に至りいなかったりします。
そんなミミは強くたくましく生きる麗奈が大好きでした。

麗奈の通う美術専門学校には雅人という男がいました。
若い男性、学生なので、麗奈を誘うのですが、突っ張って行きている麗奈は取り合わないのです。

麗奈の両親はお互い恋人を作って勝手にやっているのか、彼女は一人で暮らすことにしたのです。
専門学校の先生は美術で生きていくなら美大進学を勧めますが、麗奈は大学に興味がなく、就職するといいます。

専門学校の事務員の美優があまり学校に顔を出さなくなった麗奈の家を覗きに来ました。
大学進学を考えてはどうかということと、学校にも顔を出すように言ったのでした。

麗奈は専門学校の斡旋でデザイン事務所に見学へ行きます。
そこで働く人たち、プロの仕事を見て、得るものはありました。
特にチーフと呼ばれる人からは目をかけてもらい有頂天になっていましたが、彼の目当ては彼女の「絵」ではなく「若い女性」だったのです。

ミミはむしゃくしゃして、外をうろついていた時に、他の猫の縄張りに足を踏み込んだのですが、そこにいたのは大きな傷と尻尾の先が曲がった猫でした。
ミミはその猫をカギシッポと呼びました。
カギシッポは野良猫であり、餌を自力で捕る事ができるのでした。
ミミはその夜カギシッポと結ばれました。

カギシッポが死に、彼の縄張りはミミのものとなったと、ボス猫のクロが伝えに来ました。
その差配をしたのもジョンという犬なのです。

出産を経て、ミミは完全に麗奈の飼い猫となりました。

 

ミミの子どもたちはか弱い1匹の子猫を覗いてすべてもらわれていきました。
残った最後の1匹はクッキーと言う名前で、老夫婦の家に行くことになりました。
クッキーは誰もいない家と思っていたら、若い女性が一人いたのです。
彼女の名前は葵でした。

葵は幼い頃からの親友がいました。
親友の名前は麻里。
一緒に漫画を書いていた親友の麻里が死んだのは自分の責任。
葵はそれ以来家から出られない状態になっていました。
お会いを癒やしてくれる子猫のクッキー。
そんな折、クッキーのママであるミミの体が良くないとチョビから伺います。

クッキーはすぐにでも合いたいのですが、飼い主である葵は家から出られません。
クッキーは強引に家を飛び出していきました。
迷子になったらどうしようと思う葵はクッキーを追いかけるために家を出ます。

 

ジョンは老い先短いことを知り、飼い主の志乃のことを野良猫のクロに託して去っていきます。

ジョンの飼い主の志乃は主婦でしたが、舅と姑の介護に明け暮れた人生でした。
優しい志乃は飼い犬のジョンはもちろん、ジョンのところにやってくる黒い野良猫にも餌をきちんと与えてくれます。
志乃のもとに駆け込んできたのが実兄の息子の亮太でした。
彼は本当に平凡な人間で、自己主張も特に強くなく、父の薦めで就職したのですが、その会社での仕事に嫌気が差して逃げ出してきたのです。
まさにブラック企業で、このまま続けていると自分が潰れてしまうと本能が訴えていました。

ジョンの気配を感じたクロとチョビは駆け出しました。
追いかけていく美優と亮太はばったりと出合わせます。

 

 

 

感想

人間と猫がそれぞれのパートに分かれて、彼らの目線と言葉で語られていきます。

吾輩は猫である」という大文豪が書いた小説がありますが、もっと噛み砕いて、またこの時代の若者の心に直接語りかけるような話題なのか、とても読みやすいです。
人間と猫がそれぞれお互いを見ているのですね。


第1話から第4話までありますが、それぞれ別の話のようですべてつながっています。
そしていずれの話も飼い主である人間と飼い猫がそれぞれ自分の主人やら自分の人生(猫生?)やらを自分の口で語ってくれます。

そしてちゃんとつながって、ほっこりするようなエンディング(エピローグ)を迎えます。

 

猫は無条件に可愛い。
特に子猫の可愛さはもう反則級で、そういった点もこの本では見事に描かれています。

私は猫とはあまり相性が良くないのか、好きになれないのですが、私の職場では猫を飼っているところが結構あり、猫の話題や写真がたくさんあります。

真面目に語ったツイートにはリツイートがつかないけれど、猫の写真にはアッという間にたくさんのリツイートやコメントが付く、ということはザラにあるようですね。

気まぐれな猫よりも従順な犬がとても可愛いと思うのですが、どちらも飼ったことがない私には本当のところ、何もわかっていないかもしれません。

動物はみんな可愛らしいといいますが、特に人の顔色を見て行動する犬や猫はその行動に意味が見出せたとき、言葉はかわさなくても心は辻合うものがあるのだろうと思うのです。

 

新海誠さんのファンならこの映像作品は見ているでしょうね。
でも原作としての小説を読んでみるのもいいと思います。

程々の長さでサクッと読めて、ほっこりとしますよ。

猫好きの方で飼っていない人なら、すぐにでも猫を飼いたくなるかもしれません。

 

 


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