悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

悪人 妻夫木聡 色んな意味で邦画らしい邦画

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マ・ドンソクの「悪人伝」を見た影響で、同じようなタイトルが並んでいたので、日本映画も見るべきだと、以前から気になっていたこの映画を見てみました。

映画情報

監督 李相日

脚本 吉田修一
   李相日

原作 吉田修一

製作国 日本

公開 2010年

上映時間 139分

興行収入 19.8億円

キャスト

清水祐一 妻夫木聡

石橋佳乃 満島ひかり

増尾圭吾 岡田将生

石橋佳男 柄本明

石橋里子 宮崎美子

馬込光代 深津絵里

祐一の職場の親方 光石ヒカル

清水房江 樹木希林

 

あらすじ

母に捨てられ、祖母に育てられた青年の清水祐一は長崎県の片田舎で、解体業をしているのです。
無口で楽しみといえば、愛車で走ることでした。

そんな祐一が出会い系で知り合った女性が生保レディの石橋佳乃でした。
石橋佳乃は久留米の理容店の一人娘。
学校卒業後は街(博多)で働いています。
会社の寮に入っており、両親からはたまにはかえってくるように言われながらも、実家へはあまり寄り付かなくなっています。

佳乃には気になる男性がいました。
ナンパされたのですが、割と大きな旅館の息子でまだ大学生の増尾圭吾でした。
そんな「彼氏」を持つ佳乃は、職場の同僚にはやや上から目線で接しているのです。
祐一は佳乃に会うために1時間半かけて博多にやってくるのでした。
増尾という「彼氏」がいながらも遊び感覚で祐一と付き合う佳乃は、祐一を冴えない、面白くない男と言いながら、セックスと車の運転だけは旨いというのでした。

佳乃は増尾と言うイケメンお坊ちゃまを狙っているわけですが、実は増尾からは、それほど相手にされていないことを知りません。
そして同時に冴えない祐一とは小遣い稼ぎのような感覚で付き合っているのでした。

祐一と約束があったにもかかわらず、偶然増尾を見かけます。
そして祐一との約束を反故にして、増尾の車に乗り込む佳乃。
愛車の白いGT-Rをぶっ飛ばしてやってきた祐一は、気持ちの整理がつかず、彼らの車を追いかけるのでした。

久留米にある昔ながらの理容店。
石橋佳男はいつもどおり仕事をしています。
妻の里子が警察からの電話を受けます。

 

娘の里子は何者かによって殺されていたのでした。
それまでの経緯から、大学生の増尾と一緒だったことが判明します。

すでに事件としてニュースにまでなりました。



その後、祐一は紳士服店で働く馬込光代と出会い系で知り合います。
光代は真面目な性格で、一夜限りの付き合いという気持ちはみじんもないようでした。

祐一の心は揺れ動きます。
そして彼女に言うのです。
「光代ともっと早く知り合いたかった」と。

 

大学生の増尾参考人として確保されますが、取り調べを受け、殺人はしていないことがわかります。

増尾は晴れて無実となり、友人たちとともにまたもや合コンなどに興じているのです。
さらには、事件で死亡した女性をネタにあざ笑うかのようでした。

 

石橋佳男は娘を殺しはしていないものの、あざ笑う増尾に対し、怒ります。
増尾に対して胸の内をぶつけたものの、虚しさが残ります。

 

祐一は人を殺してしまったことを光代に告げます。
そして自首すると言うのでした。

光代は祐一が自首するのを止め、彼と一緒に逃避行するのでした。
二人の好きな灯台へと向かうのです。
逃避行の間に、祐一はこれまでのことをポツポツと話し始めるのでした。

 

 

その日、偶然佳乃を見つけた増尾に対して、祐一との約束を反故にしてでも、増尾の車に乗り込む佳乃。
増尾の車内では、一人でもりあがっています。
増尾は、恋人気取りの佳乃を疎ましく思い、ついに峠で彼女を車から叩き出してしまいます。
そこでようやく佳乃は相手にされていないことを知るのですが、彼女の心、プライドはずたずたな状態でした。

峠で放置された佳乃を見て、祐一は車で送っていくと声をかけるのですが、佳乃は増尾から受けた屈辱をそのまま祐一へぶつけるのです。
それでもそんなところに女性一人置き去りにできないと、車に載せようとしたときに、佳乃は「拉致されて、レイプされたと訴えてやる」と八つ当たりするのでした。


 

感想

重い話です。
あの頃も、今も、そしてもっと古い時代から、援助交際、出会い系、売春といったものはありました。

名前は変わっていても、やっていることは同じ。
性交渉に金銭が発生すると「売春」の可能性があります。

会社の同僚の前で、モテる女性を演じたくて、尖った人生を歩んできた佳乃。
久留米の両親の虚しさを想像すると耐えられません。
どこでどう間違ったのか、彼女の人生は一番輝ける時期にも関わらず、最悪の結末を迎えるのです。

佳乃という女性が被害者ですが、彼女のとった行動は、最悪でした。
人間として最悪なのは増尾ですが、この手の人間はたくさんいます。
そういう人間に惹かれ、その人間にとことんまでボロクソ扱いされたにもかかわらず、彼女には祐一に対する優越感は捨てなかったのです。
そういうやり方でしか、自分を守ることができなかったと考えると、「哀れ」です。

映像的には、どうということはなく、邦画です。
叙情的に描くための長回しが多く、重くて暗いこの映画を一層重たくしている気がします。
あまりテンポよく見る映画ではないですが、これが邦画といえば、邦画です。

同じく暗い映画でしたが、ストーリー、展開が楽しめたのは「凶悪」や「日本で一番悪奴ら」のほうですね。

 

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いずれにしてもカラッた楽しめる映画ではなく、こういう作品こそが日本映画とも言えます。
中途半端にエンタメに持っていこうとすると、やはり製作費がしょぼいのと、配役に映画監督の思想が感じられない物が多いのです。


 

 

 

 

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