悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

地球の静止する日 クラトゥ・バラダ・ニクトー

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地球の静止する日 ゴート

古き良きSF名作ということになるのでしょうか。
キアヌ・リーヴス主演の「地球が静止する日」を先に見たのですが、よくわかりませんでした。

 

この作品は1951年で、モノクロ作品です。
半世紀以上前の作品であり、この映画に出演している人は、今、ほぼこの世にいませんね。

古くて映像もチープな感じはするのですが、内容はわかりやすかったですね。

超音速で飛ぶ謎の円盤がアメリカ合衆国の首都ワシントンDCにやってきます。

そこから現れた人物が地球人の言葉を話すのです。
その人物は平和のためにはるばるやって来たと言い、、地球に危機が訪れているというのです。

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平和の使者クラトゥ



周りには武器を構えた多数の兵士たちがいました。

警戒していたのですが、宇宙船から現れた人物が何かを取り出そうとしたときに、一人の兵士が彼に発砲してしまいます。

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宇宙船から出てきた人物は倒れ、円盤の中から今度はロボットが現れました。

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そのロボットは怪光線を放ち、兵士の銃やジープをあっという間に消滅させてしまいました。

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撃たれた宇宙船から出てきた人物は直ちに病院へ運び込まれ、治療を受けます。

彼はクラトゥと名乗り、大統領補佐官と話をします。
そしてクラトゥは、この世界の代表者たちを一同に集めて話をさせてくれといいます。

しかし大統領補佐官は、世界の首脳が一同に集まることは不可能だと言い切りました。

クラトゥは代表者が揃わないと話せないといい、ここでは埒が明かないとばかりに病院を脱走し、地球人をもっと詳しく知るために、一般市民に溶け込んでいきます。

 

クラトゥは物理学の教授と接触し、地球の置かれている状況を説明するのです。
そして有識者を一同に集めてほしいと伝えます。

その場所へ向かう前に、クラトゥは当局に知られて射殺されてしまいます。

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クラトゥはこの様になることを予め予測していたのか、ヘレンに自分が倒れた場合に、ゴートに「クラトゥ・バラダ・ニクトー」という言葉を伝えるように託すのでした。

クラトゥ・バラダ・ニクトー

 

この言葉によって、ゴートは動き出し、殺されたクラトゥの遺体を宇宙船に運び入れます。
そして、クラトゥに何かを施したのか、死んでいた状態からクラトゥは復帰します。

クラトゥは、集まっていた世界中の科学者を前に地球の危機を訴えるのです。

 

私はもうすぐ出発しなければならない。

宇宙は縮小し続けている。

どの集団からの武力行使も見逃せない。


安全でないものは危険とみなす。


責任を持てば自由は許される。


皆さんの祖先は法により秩序を作り、警察によりそれを維持した。


我々もその方針を尊重してきた。


我々には惑星間で相互防衛を行い、侵略に対処するシステムがある。


その高度な権力は、”警察”により運用される。


ロボットはその警察のために作られ、惑星間を宇宙船で巡回し、治安を守っている。


侵略に対処するため、彼らには絶対的な力が与えられている。


その行使は中止できず、武力を行使した者に自動的に力を下す。


彼らを攻撃する代償は計り知れないのだ。


そのシステムのおかげで、我々は文も武器も持たず、暴力や戦争を回避し、実益ある目
的のみを追求できる。


完璧とは言えないが、このシステムは機能しているのだ。


私はそれを伝えに来た。


地球内部の運営は任せるが、もし暴力を拡大させれば、地球は燃え殻と化すだろう。


単純な選択だ。


我々と平和に暮らすか、このまま消滅の危機にさらされるか…返事を待っている。


決断はあなた達次第だ。


この映画の特徴

ワシントンDCに着陸した円盤から出てきた平和の使者であるクラトゥを銃撃したことからストーリーは展開します。

今のような特撮技術がない時代です。
人間の持つ脳によって補完することで楽しむSFです。
登場人物の会話がとても重要なのですね。

この映画の真髄は、病院で治療を受けていたクラトゥと大統領補佐官のハーリーとの会話に集約されるでしょう。

大統領補佐官ハーリークラトゥの会話です。

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大統領補佐官のハーリーです。
英語が通じると…
お名前はクラトゥさんですね?

そうです。

大統領より発砲をお詫びします。

おかけください

失礼。
あなたのご来訪には非常に驚いています。
長旅で?

地球暦で約5ヶ月です。

随分遠方からですね。

約4億キロの距離です。

どこから来られたのですか?

別の惑星です。
ご近所ですよ。

近所と呼ぶには遠すぎる。

今はそう言ってもいられない。

と言いますと…

私が来た理由を…?

ぜひ聞きたいですな。
お話くださいますか?

喜んで。
ただ、今はダメです。

大統領と直接お話に?

これは個人ではなく全人類に関わることだ。

どういう意味か…

すべての国の代表者と話したい

それは難しいと…
前例がありませんし、非現実的で時間もかかりますしね。
距離もある。

こちらは4億キロだ。

確かにそうだが…。
正直に申します。ええと…
クラトゥ、我々の世界は現在、緊迫して疑念に満ちています。
このような状況で会合を開くのは不可能です。

国連があるはずだ。

よくご存知で。

ラジオの傍受です。
それで言語も学んだのです。

ではご存知でしょうが、悪の力が世界で問題を起こし…

私が来たのは、小さな揉め事を解決するためではありません。
これは全生命に関わることです。

詳しいご説明を

全国家に対して同時にお話ししたい。
その方法は?

特別に国連総会を収集することはできます。
しかし未加盟国もある。

では全国家の代表会議を

彼らが同じ席につくことはありません

脅したくはないのですが、地球の将来は危機的状況だ。
全国家にそう伝えてほしい

まず大統領に話します。
しかし結果は期待できないでしょう。

私はあなたほど人を疑ってない

私には政治の知識があります。
では

 

その後、補佐官のハーリーが再び病院にクラトゥとの面会に来ます。

こんにちは
お元気そうで

なにかご報告が?

あまりいい知らせでは…
ご提案通り大統領が会合を呼びかけました。
各国からの返信です。
”首相よりお伝えします”
”参加は不可能ですが、モスクワで開催なら検討します”
”モスクワで会議を行うのであれば、我が国は参加できません”
”ワシントンならば出席します”
どうぞ(と電信文を渡します)
無言で渋い表情を浮かべるクラトゥ

おわかりになったでしょう。
大統領とお話を

単一の国家とは話しません。
幼稚な嫉妬や疑念を招くだけだ。

我々の問題は大変複雑なのです。

私自身で判断する

お気の毒ですが…

私の星の人間のように賢くならなければ

地球人は違います。申し訳ない、お役に立てずに…

悲しい表情を浮かべて思案するクラトゥ

私が決定を下す前に市民と生活し、地球人の理不尽な行動について知りたい。

現在の状況では不可能ですな。
病院をお出にならぬよう軍からの要請です。いいですね?


本当の危機をわかっておらず、自分たちの利益を優先する、まさにエゴが招いた危機なのですが、そのエゴを人間というものは制御することができないのです。


 

この映画の感想

冷戦時代の背景が色濃く出ていますが、冷戦が終結した現在でも各国のエゴが国際会議でもむき出しになっているのを見ると、今もそう変わらないのではないかと思ってしまいます。



クラトゥが病院から出て接触した民間人のヘレン・ベンソンですが、ご主人に先立たれた未亡人。


幼いけれどしっかりした子供のボビーを育てています。
しかしほとんど素性の知らないカーペンターという偽名を使っているクラトゥに息子を預けて、恋人とのデートに出かけるのです。
それってどうなの?と思う点は差し引いて、ヘレンとクラトゥとの人としてのふれあいがあります。
本筋のストーリーとは別に未亡人である彼女は、再婚を考えていました。
その男性が実は相当薄っぺらい男であったことがこの騒動で発覚し、逆に宇宙から来たクラトゥの誠実さに心を寄せます。

何よりも罪なき幼いボビーは、クラトゥにすぐに懐いているところからもそれはわかりますよね。

今はもちろんお亡くなりになっていますが、このヘレンを演じていた女優がパトリシア・ニール
時代を感じるヘアスタイルやファッションですが、とてもきれいない人ですね。
ゲイリー・クーパーと言う大俳優と不倫関係にあって一時は総スカンを食らって干されたようですが、年齢から考えて、攻撃されるべきはゲイリー・クーパーのほうかと思ってしまいます。
今となってはどうでもいいことですけどね。

主演のマイケル・レニーはこの映画が代表作ということになっているようです。
全然知りませんでしたが、細くてスラリとした人ですね。
軍に銃撃されて倒れるシーンがちょっと大げさな気もしますが、当時の演技としてはあれが普通なのでしょう。
大統領補佐官に病院から脱出不可能と言われ、部屋に鍵をかけられたときに、ニヤリと笑いますが、細かい表情の演技がいくつも見られます。

大掛かりな特撮はなくても、CGがなくても俳優はその演技力というものを使って、存分に表現しているわけですね。

この映画もCGを使ったキアヌ・リーブスの「地球が静止する日」のほうが遥かにすごい映像なのですが、評価はあまり高くありません。


宇宙船から降り立つ人物が、地球人と対面して語るというと星新一ショートショートにもそんなストーリーがあって、中学校時代に、国語の授業でもあったな~と思い出しましたね。

 

 

 

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