悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

夢探偵フロイト マッド・モラン連続死事件 内藤了

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内藤了さんという作家さんの本を読むのは初めてです。
Kindleで手軽に読めるようになりました。
随分と以前に読もうと思いながらも積読状態でした。
最近、通勤中に読んだり、休憩時間や就寝前に読んだりしています。


この本は、

プロローグ
1.幽霊森の研究室
2.マッド・モラン
3.感染する夢
4.殺人夢
5.フィールドワーク
6.へんびさいごく早よ逃げまい
エピローグ

という構成になっています。
文庫本だと300ページを超えるようなので、そこそこのボリュームがあります。

夢探偵というタイトルになっていますが、探偵は登場しません。
探偵役は「夢科学研究所」の教授の風路亥斗(かざみちかいと)。
神経心理学社会心理学、文化情報論の学者で通称「フロイト」。
主人公になるのですが、話は卒業単位欲しさにこの研究所の助手となった城崎あかねが中心に進みます。
そしてもうひとり、この研究室に「棲む」細長い人、森本太志(もりもとふとし)。
通称「ヲタ森」で、彼は大学院生です。
ヲタを自称しているだけあって、ヲタクでコミュ障なので、人と話すのが苦手な人物。
しかし、情報工学が専門で、特殊映像のクリエイターです。
彼がすぐに茜に付けたあだ名が「ペコ」で、互いにニックネームで呼び合います。

主人公は「フロイト」。
べっ甲のロイドメガネをかけている30歳位の若い教授で、なかなかのイケメンです。
この眼鏡を賭けていることには深いわけがありそうです。
祖父の形見でもあり、祖父もこの手の学者だったようで、何が裏がありそうです。
シリーズ化してく中で、このメインとなりそうな部分も解き明かされていくのでしょうかね。
上品で、流石に教授という感じもしますが、目立つような個性はありません。
にんじんやピーマン、茄子が苦手な偏食をもっています。

あまりにも正統派の探偵役に引き換え、進行役の「ペコ」はドジでちょっと抜けたところもあります。
もともと学問に興味がなく、このキャンパスに憧れてAO入試でこの大学に入りました。
お金持ちではなく、学生寮での生活費を稼ぐためにもアルバイトばかりしており、卒業前に単位が足りないことがわかり、慌てふためくのです。
この夢科学研究所に加わって成長していく様もあり、実質は主人公のような立ち回りですね。
そして彼女と「ヲタ森」との掛け合いがこの物語を面白くしているところでもあります。
シリーズ化しているようで、「夢探偵フロイト てるてる坊主殺人事件」というものも読んでいます。
ミステリー要素もありますし、ホラー小説とも取れますが、そんなに怖さはなかったなあ、という印象です。
軽めのタッチの小説なので、読みやすいですね。

夢科学研究所ではWebページを立ち上げていて、そこで悪夢に悩む人からの相談を受け付けています。
そしてその夢を映像として作り上げるのが「天才」の「ヲタ森」です。
コミュ障で、アパートの家賃を滞納して追い出された大学院生。
お金がなく、食べるものも惜しんで僅かなお金をすべてパソコンにつぎ込む筋金入りのヲタクですが、フロイト教授からも彼の映像クリエイターとしてスキルは「天才」と言わしめるほどなのです。

大学生のキャンパス内が中心なので、いわゆる学園モノと言えなくもないですが、学生はほとんど登場しないですね。
主要メンバー3人でほとんど話が進みます。
モブキャラクターとしては、あかねが最初、庭師のジジイと思っていたのが「学長」で、予算もつかずに存続も危うい研究室も「学長」のお情けで継続できているというところがあります。
こういう大学の学長って、多くは悪い人物というのが相場なのですが、この学長は、なかなかの好人物ですね。

そしてもうひとりの好人物のモブキャラが、食堂のおばちゃんです。
学長すら頭が上がらない先輩で、すでに高齢者なのですが、元気でとてもおしゃべりで、学園内の情報通のおばちゃんです。
偏食がちなフロイトに、人参などの野菜を残さないように、注意するなど、小さな子供を叱る母親のようなところがあります。
食費すらまともにないヲタ森も世話になっており、この食堂の梅干しが大好きなんですね。

悪夢によって人が死ぬということなんかがあるのでしょうか。
夢科学研究所のWebページに寄せられた相談から、作られた夢を再現した映像。
そこから話がどんどん膨らんでいきます。
再現した映像を見た人で、同じ夢を見た人が何人も現れます。
根気よく投稿された情報を読み、絞り込んだ上で、その人達にアプローチをすると驚くほどの共通点がありました。
長野県の山奥にある、土地の人すら忘れされれたような施設。
土砂崩れによるその施設の破壊で亡くなった人たち。
それらが解き明かされていきます。



 

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