探偵物語に引き続き、この「黒い壁」という小説を読んでみました。
これもまた数時間で読めるほどの手頃な長さですね。
ストーリーの展開も早く手読みやすかったです。
黒い壁というタイトル
黒い壁というタイトルから、何かしら不安を覚えるような、タイトルだと感じました。
ストーリーなども一切知りません。
インターネットの時代、調べてしまえば、一瞬でわかってしまいますが、そうなると味気ない。
タイトルからにじみ出る「予感」のようなものを大事にしたいと思いますね。
登場人物
利根貞男
主人公
どこにでもいる普通の会社員。
37歳だが独身男性。
麻木説子
利根貞男と同じ会社に勤めるLで、利根の恋人。
28歳。
弓原美奈
利根貞夫と同じ公団の住人です。
若さがあふれる女子高生。
17歳。
弓原栄江
美奈の母親。
離婚し、現在はフリーの記者として働きながら、娘の美奈を育てています。
40歳。
マルティン
弓原栄のビジネスのパートナー。
ドイツ人。
スラリと身長が高いステキな男性。
野川卓也
友人。
10年以上前にドイツに行っているはずでしたが、急にやってきてドイツ土産である「ベルリンの壁」を渡します。
永井康夫
大学の1年後輩。
彼も急に面会を求めてやってきました。
結婚しており、幼い子供がいるとのことです。
野川と一緒にドイツで仕事をしていました。
野川とはうまくいっていないようです。
あらすじ ネタバレあります
商社に勤める利根貞男は、帰宅途中で恐ろしい光景を目撃します。
彼女は外国人で言葉は通じませんが、銃撃を受けて出血しているようです。
彼女をなんとか助けようとするも、彼女は衰弱死していしまいます。
彼女は死ぬ間際に利根にペンダントを渡します。
帰宅時に見た光景が忘れられず、恋人の説子に打ち明けます。
その後、利根は麻木説子と自宅で、その話をしました。
男女の仲である説子は信じてくれました。
突拍子もない話です。
彼の住む公団の周りでそんな銃撃戦はもちろんないのです。
彼が受け取ったペンダントはロケットになっており、中には幼い子供の姿がありました。
ほんの一週間前、急に大学の同期の野川卓也がやってきて、お土産として渡したのが「ベルリンの壁」でした。
野川卓也はドイツへずっといたものだと思っていたのですが、帰国していたらしいのです。
説子を駅まで送り、そこで食事を済ませてから帰宅するときに、同じ公団に住む弓原美奈に声をかけられ、一緒に帰宅します。
帰宅途中のコンビニで強盗にあいます。
美奈がナイフを突きつけられますが、利根はスキを見て、強盗を倒します。
と音がそのような行動をとったことには、先日の恐ろしく、不思議な体験が影響していました。
翌日、会社に来客がありました。
野川と一緒にドイツで仕事をしていた大学の1年後輩になる永井康夫でした。
永井は、野川のことを聞きにやってきたのです。
先日あったばかりであることを告げると、永井は、自分が野川に殺されるかもしれないと告げます。
ドイツパブで、説子と食事をしていたときに、弓原美奈の母親である栄江がいました。
彼女はフリーの記者をしており、そのパートナーのドイツ人マルティンと一緒に仕事をしています。
弓原栄江は、先日娘を助けてくれたお礼を伝えます。
その後も、利根のまわりには不思議なことが起こります。
永井が突然現れ、妻と子供を頼むといったきり、消えてしまったのです。
長いからもらった名刺を元に彼の住まいを探し当てます。
永井の妻は銃で殺されていました。
その後、野川を探し、彼の母と会いますが、野川卓也は半年前に亡くなったと言います。
永井が突然消えたことも、野川が半年前に亡くなっているのにほんの一週間前にお土産を持って現れたのもおかしい話です。
説子とは結婚することになり、二人で式場を探します。
そのトイレでまたしても不思議な体験をします。
そこはトンネルでした。
弓原美奈はドイツ人の少年と出会います。
ショッピングモールで万引をした少年でした。
スラリと背丈は高いのですが、どう見ても美奈よりも幼い感じです。
彼は、万引をしたときに駆け出して、階段から落ち、足を痛めてしまっています。
そしてこの少年を追う怖そうな謎のドイツ人オットーが現れ、少年を見かけたら知らせてくれと告げます。
美奈は怪我した少年カールの足の具合が悪く、病院へ連れていきます。
手術するためには保証人が必要で、母には言いたくないようで、それを利根に依頼します。
美奈の母親の栄江は、現在のビジネスパートナーのマルティンとはうまくやっていけそうでした。
一方で美奈も不思議な体験をします。
あのトンネルに迷い込んだようです。
彼女は気絶し、公団のエレベーターの中で倒れていました。
彼女が見たものはドイツ兵たちでした。
美奈の体験を聞き、利根は彼女に自身の体験を語り、話をつなぎ合わせるとこの事件の概要がおぼろげながら見えてきました。
そしてと音が受け取ったロケットを見せ、その中にいる子供の顔はまさしく、カール少年の幼い頃です。
つまりはじめに見た西洋人の女性はカールの母親でした。
ドイツが東西に分かれていた当時、秘密のトンネルとして西側に逃れたいドイツ人から金をもらい、殺していたのです。
それをビジネスとしていた人たちがいたのです。
そこに関わっていたのが、オットーであり、マルティンでした。
最終的にこの不思議なトンネルで殺された人たちの恨みによってオットーはバラバラにされて殺されます。
そしてこのビジネスを思いついたのが永井でした。
永井はこのトンネルの秘密を知った人間を殺しています。
妻も殺したのは彼だったのです。
永井は最後は当時のドイツに戻され、機関銃で射殺されます。
感想・まとめ
探偵物語とは打って変わって本格的な?と思いましたが、どうも最後の展開、オチがすんなり入ってきませんでした。
この小説は、不思議なトンネル、ワープ?時空を超えた世界が展開されます。
そしてその体験者が一人ではなく、何人も登場します。
不思議なのが体験だけならいいのですが、ペンダントであったり、ぬいぐるみであったり、当時のものをそのまま現実世界へつないでしまいます。
所々の表現に怖さもあるので、ホラーテイストもありますが、推理小説ではありませんね。
37歳という男性をめぐる女性の恋の駆け引きなどもあるのですが、この話とそれらの恋とはちょっと異質な感じを受けました。
この小説もサクッと読める長さですね。