悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

裁判所からの通知

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家業をしていた頃、裁判所から通知が届いたことがある。
なんじゃこれ?と思っていたが、当時雇用していた従業員の給与の差止めに関する通知だった。

書面を読むと、その従業員には借金があり、その支払が滞っているので、給与支払者であるところに差し押さえてほしいということである。
消費者金融での借金とローンの返済でおそらくこれまでも何度も本人に通知しているのだろうけれど、一向に支払う気がないので、このような形を取らざるを得なかったということなのだろう。
とはいえ、その従業員にも生活があるので全額ということはなく、何割か決まっていた。
本人に不服があれば異議申し立てをするなりすればよいが、そういう事も今までにあったに違いないが、全て放置していたものと思われる。
本人に問い合わせるとたしかに利用はしていたようである。
払えないから、放置していたようである。
きちんとした金額は本人も分かっていないようだ。
もうかなり前なので細かい数字は忘れたが、とにかく、そういう命令書であった。

借金をして返済が滞るというのは、恐ろしいことなのだが、当人は割とあっけらかんとしていた。
そういうものなのかも知れない。
うちの家業で働いていた従業員はみんながみんな生活苦ではない。
そんなにひどい待遇ではないはずだが、とにかく金をよく使う人達が多い。
と言って、彼らが贅沢しているというふうには見えない。
着ている服や住んでいるところを見てもけっして贅沢しているわけではない。
支給している給料で生活は十分できるはずなのだが、借金を作っては、前借りをしてくる人たちは決まってギャンブルやお酒に弱いタイプだった。

お金を給料日である月末に渡すと、翌月の中頃にはなくなって、借りに来る人もいた。
身内に不幸があったとか、病気で入院することになったとかではない。
みんな至って健康なのだが、健康すぎて遊びすぎ。
仕事が終わってからのゆとりのある時間に毎日のようにパチンコにいって散財する。
勝てば勝ったで、その金で飲みに行く。
そりゃお金がいくらあっても足りないわな。

そして彼らの経済感覚がまたすごい。
質屋に10万円借りて、ひと月に3000円入れたらよいと言うのが安いと感じる人達である。
彼らの計算では3%の金利だから安いというのであるが、いや待てよ、それは月利だろ。
年利に直すと36%だよと教えてあげるのだが、それでも借りてしまうのである。
当時の銀行金利は今のように安くはないが、それでも年利36%をやすいと思って借りるような人たち。

知らないというのは怖いし、考えようとしない人はもっと怖い。

結局、裁判所の命令で給料の一部を差し押さえていたうちから返済するという形になったのだが、数ヶ月で辞めてしまった。
今頃どうしているのだろうか。
きっと同じように借金にまみれているのだろうか。
悪事に手を染めていなければいいが、悪玉に利用されている気がしてならない。

他の従業員も同じような人がいた。
多重債務者で、最終的には半分ヤクザな街金融にお金を借りてしまったらしい。
うちの父が乗り出して談判したようだ。
そういう意味で父はまさに親方だったんだと思う。
もともと借りた金が金利で膨れ上がって何倍にもなっていたらしい。
放置しているとろくなことがない。
結婚して子供もいたので、放置していると、その家族はどうなっていたことやら。
仕事は良くしてくれる人だったから、父にとっては助けたいというい気持ちが強かったのだろうと思う。

田舎から上京し、働いていた別の青年も結局借金まみれになった。
おとなしく、真面目でボロアパートに住んで、散財せず、貯金もしていたと思う。
お酒に飲まれるタイプで、酒が入ると木が大きくなる人であった。
それでも借金をするようになったのは結婚してから。
結婚した女性とともに散財をはじめ、彼女の入れ知恵で借金を重ねることになる。
彼の場合は一人息子で田舎の両親が、はるばるやってきて、借金を自身の年金や貯金やらで支払ったのである。
なんとも酷い話である。
お金について知らないということは本当の恐ろしい。

事業をやめてからかなりの年月が経過している。
私も勤め人として、働いて給料をもらって生活しているが、今日、裁判所から別の通知が来たのである。

それについてはまた後日記載したい。

 




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