悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

雷鳴館の殺人 八槻翔

Amazon Prime Readingで読んだ。
長編ではない。短編というほど短くもないが、それほど読むのに手間がかからない長さ。
密室殺人やトリックが売りのミステリーは現実世界はどこかにうっちゃって、謎を解明することのみを追求しているので「ありえなーい」と声を上げたくなるような設定が盛りだくさん。
この雷鳴館の殺人もそうである。
名探偵の志場みなみも探偵として名をあげるにしては若すぎる設定。
購入希望者のひとりである若手の投資家にしても若すぎるのである。
名探偵志場みなみのボディガードとして雇われていた、元刑事の木場。
その木場が早々に生首になった。つまり殺された。
あまりにあっけなく、本来なら身の毛もよだつ様な残忍な手口であるにもかかわらず、あまりにも空気が軽い。
そして主人公だと思っていた名探偵は3番目の被害者となって死んでしまうのである。
ここで読者への挑戦状として誰が犯人なのか?と挑発してくれている。
まあ、そんなところかという落ちであった。
無料なので文句を言っても仕方がないが、ミステリー好きならともかく、密室殺人などが特別に好きでもない人間にとってはあまりに現実離れしているので読んでいてどこか空虚な感じがした。
作者の力量と言ってしまえばきついい言い方なのだろうが、読んでいて現場の雰囲気が味わえなかった。
まあ、長編ではないので描写も程々だったというのもあるが、殺人、それも体のない死体と顔のない死体とという恐ろしい状況の中で平然と話は進んでいく。
妙な感じ。

綾辻行人の「十角館の殺人」には遠く及ばないが、あの世界が好きな人は読んでいてもそれなりには楽しめると思う。
文句はいっているが、Prime Readingで無料だしね。

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