セッション　「Whiplash」

評論家たちの評価が高い作品として以前から注目。
TSUTAYAでレンタルしてきて、ようやく今になって見ることになった。
まさに今更ではあるが。

巷で色々書かれることが多く、見る前から拒絶反応の女房を放置して一人で見たのである。
退屈なシーンもあるし、音楽、ジャズに興味のない人には見ているだけでも辛い作品かもしれない。
音楽に詳しいわけでもないが、ジャズは嫌いではない。
ドラムというのも本格的に叩いたことはないのだが、それでもそういう真似事をやったことがある人間として十分楽しめた点は大きい。
この監督自身がジャズドラマーを目指して厳しい指導に音を上げた人間らしく、そういう世界を描いたものらしい。
この映画には登場人物は2人ということはない。
ただ、主人公の若きジャズドラマーと音楽学校の鬼教授との物語である。
そして苦難を乗り越えて主人公が高みに昇華してハッピーエンド。
こう書いてしまうと身も蓋もない。
実際はそういうものではない。
捉え方は見た人がそう思えばいいことだが、鬼教官フレッチャーの人間性はかなり問題があるし、主人公ニーマンの「俺様、何様」的な傲慢さ、エゴも異常である。
登場したときに主人公は平凡そのもの。
しかしその性根は大物になりたいという身の程知らずな野心の塊で傲慢さを隠し持っていた。
そして鬼教官フレッチャーは若い音楽家を目指す人物をこき下ろし、その才能をいくつも摘み取ってしまった可能性さえある狂気の人である。
後半に大学をクビになるのだが（その首になる理由も実はニーマンも少し噛んでいるようだが）、首になった後バーで演奏する鬼教官と若き傲慢ジャズドラマーは再開を果たす。
そこで彼は「俺は好き好んで鬼教官をしているのではない。音楽への愛ゆえだ」ということを懇々と説く。
そこに共感を覚えた主人公はまたしても一緒に演奏をすることになるが、それで素晴らしい演奏で大団円ならただのつまらない映画にしかならない。
この映画はこの先がまた狂気だった。
話が前後するが、音楽学校でドラマーとして大物になるために努力をする主人公だが、演奏会に遅刻。
バスの事故で遅れそうになり、レンタカーで駆けつける。
しかしレンタカーの事務所にスティックを忘れ、それを取りに戻らないと演奏会に出さないと鬼教官に言われるわけだが、焦る気持ちが交通事故を引き起こし、血だらけになりながらも舞台に上がる。
そして演奏するがまともに演奏できず、舞台で鬼教官に罵られ逆上し、乱闘に。
（なんちゅう演奏会や。見てみたい気もするがｗｗｗ）
もちろん彼はその後退学。
そして鬼教官フレッチャーも行き過ぎの指導が仇になり、学校をクビになる。
その証言をしたのが主人公のアンディ・ニーマン。（匿名らしいが）
そして先程のバーでの再会。
お互い憎しみ合った仲である。
関係が修復できるはずもない。
鬼教官：俺をクビにした若造め！覚えておけよ
若造　：音楽への情熱はあるんだな。そして俺をドラマーとしての資質を認めたのなら力を貸してやってもいい。
こういう感じで再度「セッション」を組む。
舞台はカーネギーホール。
こんな大舞台で若造を音楽家としては二度と表に出られないようにしてしまうつもりで罠を仕掛けた鬼、悪魔なフレッチャー。
彼には以前から演奏していた演目を伝えていたが、実は演奏するのは全く知らされていない、楽譜もない新曲であった。
このあたりの意地悪さは洋の東西を問わずというところか。やり方が姑息で汚すぎるが、こういう世界が音楽の世界にはあるのだろうか。恐ろしい。
１曲を演奏して恥を晒したニーマンは舞台から降りるが、再び戻ってくる。
そして持ち前の傲慢さで勝手に演奏を始め、まわりの楽団の人間をも巻き込んでセッションに突入。

はじめはいつもの恫喝で主人公に食って掛かる鬼のフレッチャーだが、場所が場所だけに彼の演奏に合わせていかざるをえない。
そして彼のドラムソロがついには鬼をも納得させてしまう。
これが巷で話題になったラストシーン、伝説の９分間？そのままエンディング。

この映画のラストシーンを見てどう感じるかは見ている人におまかせします。
回りくどい説明はなし。

はじめに２人だけの映画ではないと言ったが、楽団員など必要最小限の人間を除いてこの映画は２人だけの映画である。
音楽を聞きに来ている客は描かれていないし、音楽で身を立てたい人をスカウトする音楽業界の人間も登場しない。
純粋に音楽の境地を描きたかったということだと思う。
それだけにこのラストシーンはすさまじさを感じてしまうのかもしれない。
実際の演奏がどうとか言うのは専門家にしかわからないが、鬼気迫るラストシーンだったと思う。

ただ、評価は別れるだろうなあ。