悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

黒田如水 吉川英治

黒田官兵衛の物語である。
生涯を描いたものではなく、最も黒田官兵衛の生き様が強く描かれた伊丹城での投獄生活をメインに据えた小説。
なので知謀の限りを尽くして秀吉の天下獲りに大活躍するシーンは出てこない。中国大返しのシーンもない。
天下布武と覇道を突き進む織田家と中国の覇者の毛利家の間にある小大名の小寺家の臣下である黒田家。早くも時代の先を見通し、織田家に臣従するように主家に進言するが、家臣たちの中には反対するものも多く、まとまらない。
そんな中荒木村重の謀反が起こる。荒木を説き伏せるために単身伊丹城へ乗り込む官兵衛だが、実は主人の小寺政職に裏切られ、城内の牢獄に幽閉されてしまう。
ここでの生活は困窮を極め、何度も死のうと思うが、自らを鼓舞し生きながらえる。

権謀術数の限りをつくし、調略に長けた策士というイメージが強い黒田官兵衛だが、この本を読むと全く違った官兵衛像が描かれている。知性が高いだけではなく、人情もあり、武士としての信念や礼節もしっかりとわきまえた立派な人物であった。

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