悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

すべてがFになる 森博嗣

なんとも不思議なミステリー?小説である。
完全なる密室殺人。この本のどこかの部分でも表現があったが、セキュリティが強力な部屋の中であり、窓もなく部外者が入ることができない特殊な建物であり、さらには私有地である孤島という3重の密室殺人である。
主人公、というか探偵役は大学助教授の犀川創平。進行役には犀川を慕う女子大生の西之園萌絵
この二人が中心となって物語が進む。
西之園萌絵は両親を亡くしたところはあるものの、超がつくほどのお嬢様。しかも親代わりの存在である叔父は愛知県警察本部長。
今回は大学のイベントとしてキャンプでこの島に訪れた。犀川西之園萌絵以外はキャンプ地で過ごしたが、二人は、真賀田研究所を訪れる。
そして事件の舞台である妃真加島の真賀田研究所の中で完全に外部と遮断されたもう一人の主人公とも言える真賀田四季の部屋の中で起きる。
殺されたのは真賀田四季。そして所長の新藤清二。犯人を探すために尽力した副所長の山根幸弘も殺される。
真賀田四季は天才である。しかし両親殺害の凶悪犯であり、研究所内では中心人物であるとともに完全に管理、隔離されていた。
完全密室だけに犯人はすぐに見つかるのでは?と思いつつも、犯人の入り込んだ形跡すらなく、真賀田四季女史の自殺ではと考えるが、死体は両手両足切断であり、自殺では不可能。しかもその後所長も殺害されている。更には副所長の山根も殺される。
どうあがいても犯人を探しだすのは絶望的な状況。

トリックは壮大。思いもよらなかったというより、こういう小説でしか描けない。
いやあ、犯人はそういうふうに生み出しますか?と驚きも少々。
前半部分がかなりワクワク感があっただけに、この最後の方のオチが今ひとつ馴染めなかったが、ネットワーク、コンピューターウイルス、コンピューターシステムといったところを題材にしている犯罪小説と考えると素晴らしい。
それだけに読み手を選んでしまうかもしれない。パソコン、OSなんてものがある程度わかる人なら面白いところもあるが、そういうところがちんぷんかんぷんの人は辛いと思う。
何も専門知識はいらないけれど、少々その辺りの言葉くらいは知っていないとしんどい。

犀川西之園萌絵との恋愛関係の微妙さもなかなかよい。

すべてがFになる THE PERFECT INSIDER S&Mシリーズ (講談社文庫)

すべてがFになる THE PERFECT INSIDER S&Mシリーズ (講談社文庫)

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