悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

さらば深川 髪結い伊三次捕物余話 宇江佐真理

このシリーズも3作目である。

一番最初に読んだのが4作目の「さんだらぼっち」である。悪くはなかったが、かなり前に読んだのでどんな内容か全く思えていない。
時代劇は全てそうなのかもしれない。その瞬間は色々と思うところはあるけれど、同じような話が多いのであんまり覚えていないという。
登場人物も新たなメンバーも登場するが、それでも過去の話を思い出せないものである。
しかしこの作品に登場する直次郎はすぐに分かった。確かにオカマっぽいしゃべり方で特徴がある。強烈なキャラクターである。4作目に登場していると思うけど、どんな話だったのか覚えていないのである。
女中のおみつも祝言を迎え、お文の家に新しい女中も登場。そして伊三次との仲も着くの離れるのを乗り越えてついに所帯を持つことになる。まあ、一番最後にだが…。

「因果堀」
スリの話である。お文が女スリに財布をすられたのである。そしてその女スリとは?
この話で華々しく登場し大活躍するのが若い天才スリ師の直次郎である。
そしてこの話で仲違いしていた不破友之進ともとの関係になる。前作では大いに男を下げた不破であるが、第3巻ではこの話をはじめとして大いに男を上げたのである。
廻り髪結いという町人に過ぎない小者である伊三次に頭を下げて詫びたのである。伊三次は武士にそういうことをさせるために意地を通してきたことを逆に恥じるというなんとも日本男子なら感涙必至のシーンである。
さてこの女スリ師がまた事情のある人間である。名はお絹。同業者の増蔵の元妻で緑川に捕まる。増蔵のとった行動もわかるし、穏便に事を運んだ不破はあっぱれである。

「ただ遠い空」
女中のおみつの祝言が近づいてきたが、おみつは自分の後釜である女中が決まっていないことを案じていた。
緑川のところから娘(と言っても既婚者)が先輩芸者である喜久寿に預けられていた。喜久寿は手に負えないじゃじゃ馬であり、ちょうど女中がいなくなったお文に面倒を見てほしいと申し出る。
お文は躊躇していたが、おみつはその女中の試験をして確かめるという。おこなという女中の誕生。そしてこのおこなの生きてきた道もまた複雑である。
かなり個性的な人物で快活なおみつとは違った明るさ、奔放さを持っている。

「竹とんぼ、ひらりと飛べ」
美濃屋の女主人おりうは病弱で過去に生き別れになった娘を探してほしいと依頼を出す。生き別れになった原因はなせぬ仲で生まれた子供ですぐに養子に出されてしまったためである。女の子であったらしい。
弟分の弥八はその娘はお文ではないかという。おりうとお文は似ているという。お文は芸者の子と伊三次は聞いていたが…

「護持院ヶ原」
秋津源之丞は辻斬を繰り返し、道場を破門になった。その源之丞は本多家家臣の岸和田鏡泉によって匿われる。
岸和田鏡泉、秋津源之丞は札差殺害の真犯人としての疑いが濃かったが旗本の家臣である。同心ごときにさばけるものではなかった。
また岸和田鏡泉は不思議な幻術を使って相手を惑わせるという。
伊三次は秋津源之丞を通して岸和田鏡泉の髪結をすることになり、様々な情報を得る。
不破友之進たちは作戦を練る。

「さらば深川」
この話で所帯を持つことになるが、なんとも外的要因で結ばれるという苦いものである。
若いころ世話になった先代伊勢屋の息子、伊勢屋の二代目主人に好意を寄せられていたお文。第2巻でも伊勢屋の主人に家の改築やら衣装やらお金を使ってもらっていた。
伊勢屋の奥方がなくなったことによって後妻になれと迫られる。しかし自分には伊三次という決めた人がいる。先般揉めた原因もこの伊勢屋の主人が元だった。強引に迫る伊勢屋に鉄肘を食らわせ、恥をかかせたお文。
その仕返しとばかりに先だって改築した費用を返せと迫る。返せないなら先代からもらった家を売ってでも返せと…。
なんともケツの穴が小さい男。モテないだろうなあ。
そしてこの伊勢屋がまた先代よりも商いを太くしたとかということでやりてだと思っていたらきちんと裏があったようで…。
最終的に先代からもらった家は火事で焼けた。原因は伊勢屋に働いていた小悪党の仕業。
住む場所をなくしたお文にうちに来いと告げる伊三次。
なんともいえないプロポーズである。


さらば深川―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)

さらば深川―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)

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