悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

翳りゆく夏 赤井三尋

赤井三尋という作者の本。
初めて読むが、非常にこの作品は読みやすく、すいすいと読めてしまうのである。
ヒロイン朝倉比呂子の東西新聞社への入社で週間秀峰がすっぱ抜いた記事から物語は始まる。
20年前の営利誘拐事件。犯人は身代金を受け取り、逃走中に事故で死亡。その犯人である九十九昭夫の娘が東西新聞に入社が内定した朝倉比呂子である。
興味をそそられる展開。そして誘拐犯の娘であるヒロイン朝倉比呂子が非常に魅力的な女性であることから、ついつい読み進めてしまうのである。
東西新聞としては週刊誌から喧嘩を売られた形。そして東西新聞の社主からの命令で20年前の誘拐事件を再度洗いなおすことになる。担当するのは当時この事件を担当していたが、現在は閑職に追われてしまった梶。この物語の実質の主人公である。
内容的に非常に面白く、展開も悪くなかったが、最期のどんでん返しが気に入らなかった。ちょっと残念な展開である。
こういうミステリーには仕掛けが必要だが、予め読者にもそれなりの伏線を残しておいて欲しかった。全くそういうのがないというわけではないが、本当に足元を救われてしまった展開である。
それだけにエライこじつけのような気がして残念。序盤から中盤、終盤にかけての展開も含めて非常に面白く読めていただけに残念。
そしてヒロイン朝倉比呂子がこれだけ魅力的な女性として描かれているのに、全く事件の真相とは関係ないことに終わって閉まっているところも残念である。
面白い。読んで損はない作品だと思うが、個人的にはエンディングが好きになれない。おそらくそう感じている人も多いと思う。


翳りゆく夏 (講談社文庫)

翳りゆく夏 (講談社文庫)

Copyright ©悪魔の尻尾 All rights reserved.