悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

楊令伝 十三 北方謙三

各勢力の小競り合いやせめぎあいが続く。
金の政争、大臣の粘罕(ネメガ)と独自の軍を抱える撻懶(ダラン)との争い。
今回の題字になっている蕭珪材と岳飛の戦いが見応えがある。出番は少ないが魅力ある軍人としてずっと描かれている蕭珪材(ショウケイイザイ)。護国の剣を携えて超然と構えている姿はまさにハードボイルド小説の中に出てくる存在。本当にかっこいいのである。護国の剣の鋭い切れ味。具足後とバッサリと切れてしまうが刃こぼれもない。それどころか剣ごとぶった切ってしまっているのである。にも関わらず、最終的には岳飛の持った雑兵の剣都のぶつかり合いで折れてしまう。天は蕭珪材に死ぬ時を教えたということになっている。なんともニクいシーンである。
そしてこの作品の前半では颯爽と登場した岳飛が負けに負け続けるというのが予想外。負けて学ぶところもあり、今後また成長するのだろうか。梁山泊領内に旅に出て楊令たちと出会ってしまい、そこで食事をするシーンなど、まさに敵味方を超えた男同士である。ありえないだろう。小説すぎる。
この二人にやはり魅力では負けてしまう張俊は斉の禁軍となる。そして戦のシーンもなく梁山泊の楊令に木っ端微塵にやられてしまう。やはり引き立て役に回ってしまうのか。

サブストーリー的なものが多くて細かいところは読んだあとからドンドン忘れていく。あとから以前の話の続きのようなものが出てきて初めて、そういう男の物語もあったかと思うような展開。

Copyright ©悪魔の尻尾 All rights reserved.