悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

楊令伝 八 北方謙三

題字は呼延凌。穆凌改めである。ここまでそれほど目立たなかったが、六巻の終わりに呼延灼が戦死してからはその軍を引き継ぎ、一軍を率いる将になる。今回は主役級なのか?と思っていたが、案外脇役というか地味である。キャラの個性という意味ではそんな役回りという気がする。
ともあれ、宋禁軍との戦いが本格化してくる。そして主要キャラもドンドン戦死していく流れになっている。呼延灼史進、張清の古参の三将軍でまず呼延灼が戦死。そして今回は張清が戦死。残るは史進のみ。そして鉄笛の馬麟も亡くなった。一方禁軍もナンバー2の趙安が戦死。後は李明が引継ぎ、よくもり立てる。梁山泊の同盟とも言える金の南下に伴い、そちらを防ぐ。劉光成の負傷、岳飛も負傷、岳飛を打ち負かした衛政も戦死。
なんといっても花飛麟と扈三娘の叶わぬ恋。花飛麟の登場の時から二人のこういう流れは計算されていたと思う。美男子と美女。美男子で精力絶倫、一方聞煥章によって性への欲望を目覚めさせてしまった海棠の花との儚い恋。扈三娘は戦死。花飛麟は一時の激情で証としての判断を謝るが、そののちは生まれ変わったような名将として活躍する。やはりスタートして描かれている。
一方楊令は主人公であるにもかかわらず、ちょっと出番があまりなく、最後のほうで史進と語り合ったりと猛将である二人はなぜか感傷に浸っているようなところが。

しかし童貫は相当な爺さんのはずなのに、凄まじすぎる。そしてこの童貫を始めとして禁軍も梁山泊も軍人としてお互いを認め合っているところがある。国の反乱というものを超えた軍人として戦で表現できることをお互いみせている。本人たちは戦うことに生きることを見出し、大満足だろうが、周りは大迷惑という気もしないでもない。

まあ、そんなことを考えながらも行き詰まる合戦模様を描いていて、読んでいてワクワクするのである。

Copyright ©悪魔の尻尾 All rights reserved.