五巻が呉用、童貫、方臘が中心となった南方の宗教動乱の話であった。今回はこのような大きな戦が治まり、その余韻とも言える話である。登場人物の小さなネタ中心である。メインストーリーよりもサブストーリーという感じ。
公孫勝から致死軍を引き継いだ候真と羅辰、またもや死に損なった呉用、女真族の臣下となったいる蔡福たちの話。息子の蔡豹も心の闇をかけて結局は子午山の王進の元へ行く事になる。便利なところである。更生施設というかなんというか。ここ出身の者はみんな立派な人間になって巣立っていく。不思議な場所である。
メインクエストを外れたサブクエストだらけのRPGの感じであるが、一番のネタは読者サービスとも言える一丈青扈三娘と聞煥章とのまるで官能小説のようなやり取りの話である。結局は陵辱を受けて調教寸前までになっていたが、子供が救い出されたということを知ると聞煥章を殺して脱出する。もともと武芸に秀でており、逃げられなかったわけではなく、子供の安否を気遣うあまりのことでもあった。
この巻に限らないことだが、本当に活躍する人物がどんどん若返っていく。水滸伝から引き継がれたこの物語も登場人物の中心はどんどん若い世代に引き継がれている。主人公が若い楊令ということもあるだろう。唯一、童貫と李富は未だに宋の中心だが。
最後の方になって、あの童貫すら王進のいる子午山へ訪う。そこには今は王進の妻となった元秦明の妻、息子もいる。なんとも不思議な場所である。俗世を嫌って隠棲を続ける、まるで仙人のようだ。
- 作者: 北方謙三
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/11/18
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