悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

楊令伝 五

宋の戦争は北と南にわかれていたが、北は変な決着の付け方となった。戦は五分五分で禁軍の趙安も燕京の3将軍も立派な戦い出会ったが、新帝になるはずの耶律淳が青蓮寺の李富により暗殺。国としての中心を失ったため、瓦解。そして勅令という形で趙安は外され、高俅が赴任。しかし瓦解したとはいえ、燕京を落とすことはできず、同盟国の金に燕京を落としてもらうという恥ずかしいことに。見返りに金銀を渡すという約束。
そして南では童貫が宗教反乱の首謀者方臘をついに討ち果たす。
今回は趙仁と名乗って方臘に近づき、軍師となって補佐する呉用の活躍が見られる。もともとは方臘を利用することにより、禁軍の力を外へ向けてその間に梁山泊軍が力をつける、そのための作戦であったが、いつの間にか方臘に虜にされてしまったようである。
宗教家、革命家である方臘はとてつもないものを持っていたに違いないが、どうも好きにはなれないキャラクター。ただ、周りの人間は方臘のために死ぬことを厭わないものばかりである。呉用もそう。もともと死んだも同然で死に場所を探してこの任務についたということもある。
それにしても童貫の戦巧者ぶりは見事というしかない。度人をなせという一言で多くの信者がまさに死を超えた動きを見せる。この光景はすでに人ではなく、なんだかゾンビ映画バイオハザードに出てくるゾンビのように思えた。もはや人ではないというのがまさしくそのものである。しかし殺した方はまさに人を殺したという罪の意識にさいなまれる。戦で戦って殺したのであれば、納得もできるし、兵士は無謀な死に方をしない。撤退もする。しかし死ぬことが喜びと教えられている信者たちは全く死を恐れない。殺す兵士たちはただの殺戮を繰り返し、だんだんと精神をやられてくるというなんとも想像するだけでおぞましい戦だったような感じ。
今回も楊令はそれほど活躍の場面がなかった。一方童貫の従者として引きぬかれた岳飛はドンドン良さを出してきている。若いが素晴らしい才能に恵まれている。これからも水滸伝の続編として若い世代の台頭を予感させてくれるので楽しみである。

楊令伝 5 猩紅の章

楊令伝 5 猩紅の章

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