悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

楊令伝 四 北方謙三

方臘による南方の反乱はただの反乱ではなく、相当な大規模な反乱へと広がっていく。信者たちは死を恐れず、むしろ死ぬことが幸せであるというとんでもない教えを説いている。死ぬことを恐れない信者は兵士ではないため、彼らとの戦いはむしろまっとうな兵士にとってはただの殺戮に過ぎない。禁軍の童貫はそれらのことを既に見抜いている点でも通常の将軍たちとは感覚が違う。
一方北方は童貫ではなく趙安が率いている。先手の葉超は梁山泊に敗れ、そして燕京軍にも破れてしまう。北の情勢はかなり複雑である。幻王として金の阿骨打に協力していた楊令が正式に梁山泊の頭領となった。その金は宋と同盟で燕京十六州を餌に遼と戦う。遼の燕京以外は手際よく制圧。それは幻王によるところも大きい。そして遼軍の最強の禁軍は残ったままだ。それと対峙する形になった。外交的には非常にマズイ立ち回り。金との同盟では遼に侵攻したら燕京を宋が攻めるという約束である。ただし金と梁山泊の関係は近く、また遼も先帝が幻王楊令に一蹴されたため、逃亡。遼から見放される。新帝を立てた遼は燕京に新しい国家を作る。守る守備は旧遼の禁軍。精強である。それらの新国家建設を画策したのが青蓮寺の聞煥章。
この巻は終始戦だらけである。展開も早く、面白い。荒くれ者たちの心の故郷である子午山、王進の隠遁先。多くの若者を育てた土地である。楊令もそうだが、古くは武松、史進なども過ごした土地である。そして武道だけでなく、人間としても教えられることが多かった。王進の実母であり、彼らの心の母でもあった王母がついに亡くなった。

さらに加速しそうな感じの南と北の情勢。方臘の乱はどうなっていくのか。梁山泊を忘れてはいないが、方臘に心を奪われつつある趙仁こと呉用はどうなるのか。楽しみである。
あっけらかんとした正確と無双な強さを発揮する史進とその弟子花飛麟の活躍も楽しみである。

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