「あかね空」という時代劇風の小説があった。最初はとっつきにくい感じがしたが、読んでいくうちにグングン引きこまれていく小説であった。
この「蒼龍」は「あかね空」の作者である山本一力のデビュー作らしい。実際にはもっと前にも作品を出していたらしいが、本としてはこの作品がデビューということになる。
「あかね空」は直木賞という作家にとっては最大級の栄冠を受賞する。このデビュー作もそういう意味では非常に面白いというか読ませる文章になっている。
ひとつひとつがつながっているわけではなく、短編の読切である。正直言って、一番最初の「のぼりうなぎ」が読み始めてすごく良かったので、続があるのかと思いつつ、「節分分かれ」を読む。どちらも証人の話。「のぼりうなぎ」は老舗にあぐらをかいているのを改革するためにあえて門外漢の職人を手代としてやという話。「節分分かれ」は灘の銘酒をどれだけ安く売れるのかということに挑む酒屋のはなしである。
どちらも非常に面白い小説だが、結末が描かれていない。あえてそうしているとは思うが、消化不良気味で残念。
「菜の花のかんざし」は武家のお話。剣術師範の家柄だが、ちょっとした事故によりお家断絶の危機に。幼い息子、娘の運命は…。なんとも言えない作品。
読んだのは現在ここまで。どの話も短い小説だが、中身は決して手抜きの感じはない。きちんとした描写があり、読み手を納得させるだけのものがある。それだけに最後の部分が描かれておらず、なんとも続きが読みたくなるというふうな作品になっている。
- 作者: 山本一力
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2002/04
- メディア: 単行本
- クリック: 7回
- この商品を含むブログ (1件) を見る