悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

ブラックホークダウン

戦争映画である。アフリカ、ソマリアの内戦を舞台にした実話が背景になっているらしい。これがリアルな戦争映画なのかどうかは判断する材料がない。そういう経験がないからである。戦争映画には主人公を絞って、ヒーロー的な活躍をするものと、戦場の悲惨さを強烈に印象づけるものとがあるが、この作品はまさに後者。娯楽映画としては見ているのが辛い。
タイトルのブラックホークUH-60という輸送ヘリを改造し、戦闘用にしたものである。いろいろな国でも使われているベストセラーのヘリコプターで数々の戦場に送り込まれているそうだ。民族紛争の続くソマリアの内戦へアメリカが介入。アメリカの鍛えあげられた兵士が投入され、計画では30分の作戦であった。しかし、計画通りにいかず、ブラックホークが墜落、つまりブラックホークダウンである。墜落したヘリを救出するために兵士を投入し、市街戦が泥沼化する。少数ながら精鋭の米兵と命を顧みないソマリア民兵が血みどろの戦いを続ける。時間にしては半日ほどの戦闘を描いているだけなのだが、その恐ろしさは映像を通じて語りかけてくれる。

ソマリアの内戦状況は非人道的であることはさておき、「アメリカこそが正義」というイメージの映画ではない。戦争はいくら大義名分があっても戦闘の実際はただの殺し合いであり、悲惨さしかない。強烈な反戦イメージを植え付けられる映画。エンディンの後の字幕で米兵19名の死亡と書かれているが、ソマリア民兵は1000名以上。米兵の命が重く、民兵が軽いということはないだろう。ただ、幼い子供が兵士として簡単に死ぬ。多くの子供達が親を失い、あるいは誘拐され、兵士となっていく。恐怖心を克服するためか、マインドコントロールのためか、幼い頃から麻薬漬けになっている。もともと世界でも最貧国。援助物資が届かず、それらは換金され、武器に変わる。

なんだかやりきれない気持ちになる映画だった。


ブラックホーク・ダウン [DVD]

ブラックホーク・ダウン [DVD]

Copyright ©悪魔の尻尾 All rights reserved.