悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

こころ 夏目漱石

高校時代の課題図書だった記憶がある。
冒頭のところを読んで後は、あとがきを読んでから感想文を書いて提出した記憶がある。
先生からはしっかりと見ぬかれており、あとがきを読んで書いたことがバレバレだった。
そんな苦い思いがあったが、かなり久しぶりに読んでみると、やっぱり文豪の書く文章はひと味違うと感じる。
書評は多くの人が語っているので今更であるが、状況の描写よりも心理的な描写が多く、またストーリーというものもあまりない小説である。そういう意味では凝った仕掛けなどもないが、くどいくらいに書かれている文章には力があり、グイグイ引きこまれていく。高校生の時には全くそのように感じなかったのに、何故だろう。
第1部の「先生と私」の出会いは本当にダラダラとしており、多くの人がそう語っているように、つまらない。ここを乗り切ると少し読みやすくなってくる。
第2部は「両親と私」。主人公である私の両親、とりわけ病死前の父親の姿や大学を卒業して就職先が決まっていない私に対する親の様子などが描かれている。ある意味現代でもわかる部分もある。だんだんと筆の勢いもついてきたのか、心理描写がどぎつくなってくる。
第3部が[先生と遺書」。今までの話はこの遺書の部分を書きたいがための前ふりだったような気もする。いろんな所であまりにも長すぎるだろう!というツッコミがあるが、本当に長い遺書である。それだけに「先生」の人生が細かく描かれており、そこに登場する親友の「K」と共に人間のエゴイズムというものを純粋に考え、悩み、破滅へと導かれていく。
本当に情景の描写や動きなどの描写が殆ど無く、小説としてはまさにテンポが悪い見本のような作品であるが、それにもかかわらず読ませてしまうのはやっぱり文豪ならではなんだろう。今の時代には考えられないような感覚もあるが、人間のエゴイズムの根本を再度文字によって考えさせてくれる。

こころ (新潮文庫)

こころ (新潮文庫)

Copyright ©悪魔の尻尾 All rights reserved.