心理的に追い詰められるということと、保険金殺人というテーマだけに生々しくやけに怖い小説だった。主人公の若槻が犯人と思っていた菰田重徳が実はシロで、被害者だった。どんでん返しはなく、読み進めていくうちに犯人はわかるようになっているが、犯人が分かってからの行動、特に後半部分は恐ろしい。人間の皮をかぶったけだものである。これはやはり推理小説ではなく、ホラー小説なんだと実感。
同時に読んでいた「緋色の囁き」も殺しのシーンは結構グロいが、ひたひたと押し寄せる怖さは「黒い家」のほうが怖い。映画化されているようだが、この怖さを映像にすることなんて出来るんだろうか。おぞましい匂いを放つ黒い家を映画でどう演出するんだろうか。潰し屋の三善、そっちの筋ではバリバリの裏稼業の人があんなにあっけなく、なんて理不尽を思うとキリがないが、描かれる犯人像が「怨み」や「憎しみ」とは全く違うところで殺しを淡々と進めていくのが恐ろしい。
貴志祐介氏は大阪出身でこの作品に登場する地名がすごく馴染みのあるところが多いため、個人的にはリアル。

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