悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

グラスホッパー 伊坂幸太郎

一気に読んだ。
主に3人の登場人物のクチから物語が語られる。伊坂幸太郎のお得意の小説という感じ。
設定は現実離れしているものの、読みやすく説明がいいので現実っぽさが出ている。
3人の殺し屋と妻を無残に殺され復讐に燃える善人。殺し屋も個性的でどこか変わっている。
ひとりめは主人公とも言える鈴木。妻を殺された善人。殺したのは非合法企業の「令嬢」の息子。復讐を遂げるために教師を辞め。相手の懐、つまり「令嬢」の社員として働き始める。
ふたりめの主人公は政治家の秘書を自殺させる「自殺屋」の鯨。体が大きく、力も強いが、暴力に訴えることではなく、相手を死に至らしめるという特技を持つ。この業界ではある意味有名人。
そして3人目の主人公がもっとも殺し屋らしい殺し屋の蝉。人を殺すことになんの罪の意識も持たないが、仕事を斡旋する上司の岩西を見返したい。
この3人の視点で描かれ、物語が進行していく。
殺し屋や裏稼業が舞台だけに、血生臭いが、表現が淡々と客観的で、かなりえぐい殺人もあるにも関わらず、そう感じさせないところがある。その作風を如実に表しているのが主人公ではないが、物語の重要人物の「押し屋」の槿。これでアサガオと読ませるのもおかしいが・・・。彼は殆ど語らず、目立った行動もしない。殺し屋などの裏の業界でも噂にはなるものの知っているものは少ない。
プロフェッショナルな3人の殺し屋とパーフェクトな悪人の「令嬢」関係者。また悪徳政治家。その中心にいるのが拍子抜けするほどの凡庸な善人の鈴木というのが面白い。どこかマヌケで読んでいてやきもきさせるが、殺伐とした作風が爽やかになるのは彼のおかげ。

グラスホッパー (角川文庫)

グラスホッパー (角川文庫)

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